Kandao社から2024年8月29日発売の360度アクションカメラのQooCam 3 Ultraは、最大8K30fps動画と9600万画素の静止画、10bit対応で競合他社の製品を凌ぐハイスペックな性能で、画質にこだわる本格派クリエーターから支持を得られそうです。
今回はQooCam 3 Ultraの主な機能や特徴、使い勝手などを実際に使用して撮影した作例と共に360度アクションカメラとしての実力を徹底レビューします。
※発売前の試用機でテスト撮影を行っているので、若干の仕様変更がある場合もあるのでご了承ください
Kandaoってどんなメーカー?
Kandao(カンダオ)は、中国の深センを拠点とする主に業務用のプロ向け360度カメラや3D VRカメラなど、高品質な映像撮影機器を開発・提供しているメーカーで、革新的な製品デザインと先進的な技術を融合させ、特に、3D映像や高解像度のVR映像の分野では競合他社と比較しても高い評価を得ています。
そんな画質にこだわるKandaoが一般向けに開発しているのがQooCamシリーズで、QooCam 8KやQooCam 3などの製品が人気で、今回新たに追加されたのがフラッグシップ的な存在のQooCam 3 Ultraです。
QooCam 3 Ultraの主な特徴
外観
QooCam 3 Ultraの見た目は、QooCam 3を少し長くしたようなサイズ感ですが、スペック的にはQooCam 8Kの後継機のような360度アクションカメラです。QooCam 3 Ultraの外観サイズは幅71.5mm×高103.2mm×奥26.6mm、重量はバッテリーを含めると336gになります。
実際にQooCam 3 Ultraを手に取ってみると他のアクションカメラと比べると一回り大きいサイズ感で、重量もずっしりとした印象があります。長めの自撮り棒を使う場合は結構な重さを感じてしまうかもしれません。
パッケージにはクリーニングクロスと専用ソフトケースが標準で付属されてるのが非常良いと思います。欲を言えば、専用ソフトケースにクリーニングクロスが収納できるポケットがあると使い勝手が更に良くなるのではないでしょうか、Kandaoさん是非お願いします!
レンズプロテクターは標準では同梱されていないので、QooCam 3 Ultraをスポーツなどで使用する場合は別売りのプラスチック製の純正プロテクターを購入したほうが安心です。
基本性能
QooCam 3 Ultraは360度動画&静止画が撮れるだけでなく、アクションカメラとしての基本性能はGoProやInsta360などのライバル機と遜色なく、手振れ補正(Super Steady)や防水防塵(IP68、水中最大10メートル)、撮影機能では、タイムラプス、インターバル撮影、ループ録画など一通りの撮影が楽しめます。
360度パノラマ8K動画&9600万画素写真
QooCam 3 Ultraの最大の特徴は、動画が最大8K(7680×3840)30fps、写真が最大9600万画素(14K 13888×6944)の高解像度の360度パノラマ撮影が可能な点です。
動画は360度であれば8K@24/25/30fps、5.7K@24/25/30/50/60fps、4K@100/120fps、シングルレンズモードであれば4K@24/25/30/50/60fps、3.4K@100fpsなどにも対応していて様々な動画撮影ができます。また、5.7K 動画モード(24/25/30/50/60fps)は、8Kでオーバーサンプリングされるので繊細でノイズの少ない高画質な動画を撮影することができます。
写真は高解像度の9600万画素以外に、2400万画素(6944×3472)サイズの360度パノラマ撮影ができますが、シングルレンズモードは使えません。
以下がQooCam 3 Ultraで撮影した8Kの360度パノラマ動画のサンプルです。 8K@30fps、10bit BT.2020(HLG)で撮影したものをPremiere ProでRec 709に変換しています。
10bit HLGのHDR動画に対応
QooCam 3 Ultraは、HDRディスプレイで表示できる10bit BT.2020 HLG(Hybrid Log-Gamma)動画を撮影することが可能です。 色域の広い10bit BT.2020 HLGは約10億7374万色の色を再現可能で、約1677万色の8bitと比べると、明るい部分を鮮明に表示できるのが魅力です。
ただし、QooCam 3 Ultraの10bitはクロマサブサンプリングが4:2:0なので、編集時にカラーグレーディングなどで色調整しすぎると画質が低下しやすいので、どちらかと言うと撮って出しで気軽にHDRを楽しむと言った使い方が良さそうです。10bitで撮影すると編集作業が面倒になると言ったデメリットがあるので、10bitが不要な場合は一般的な8bit BT.709に設定を切り替えて撮影する事もできます。
以下のサンプルは、QooCam 3 Ultraの色域を10bit BT.2020(HLG)に設定して8K@30fpsで撮影した360度動画を、編集でリフレームして4K HDR動画にしてみました。色調整は一切していない状態です。
DR(ダイナミックレンジ)ブースト
QooCam 3 UltraのDR(ダイナミックレンジ)ブースト機能は、晴天時の日中の屋外などの明るい場所での撮影でハイライトを鮮明に捉えることができる機能で、動画では8K 24/25/30fps、5.7K 24/25/30fps、写真では2400万画素の撮影で使用可能となります。
以下の作例は、2400万画素の静止画にDRブーストを適用して撮影したものです。
太陽の付近を拡大して、DRブーストなし(通常の写真モード)とDRブーストありとを比較してみると一目瞭然で、DRブーストを適用すると太陽の光の白飛びを最小限に抑えられているのが確認できます。
DNG8モードで低ノイズの画像に!
QooCam 3 UltraのDNG8モードは、1回シャッターボタンを押すだけでdngファイルを8枚生成してくれるモードで、撮影後は専用アプリのQooCam Studioでファイルを開けば自動的に1枚の画像にスタック(合成)してくれます。画像をスタックさせることでザラザラとした高感度ノイズが軽減されるので、DNG8モードは夕景や夜景など薄暗い低照度の場所での静止画像の撮影では非常に有効な機能となります。
スタックした画像はdngやTIFF形式でも書き出しができるので、後からPhotoshopなどの画像処理ソフトを使って色味などを調整して綺麗に仕上げるのが良さそうです。
以下の作例は、夕方の薄暗い時間帯にDNG8で撮影した写真(9600万画素14K 13888×6944)です。露出設定はオートで、ISO感度は2889でしたが、灯りなどのハイライト部分が若干白飛びしたのが少し残念です。夕景や夜景はマニュアル露出にして、明るさを自分でコントロールした方が失敗が少ないかもしれません。
ノイズが目立ちそうな雲と建物付近を等倍に拡大して切り取ったのが以下の画像です。ISO2889でも、8枚スタックさせるとかなりノイズが抑えされているのが確認できます。1/1.7インチセンサーである事を考えるとかなり優秀な結果ではないかと思います。
AEB(自動露出ブラケット)撮影も可能
QooCam 3 UltraはAEB(自動露出ブラケット)撮影も可能で、明暗差の激しい状況で静止画を撮影する場合に有効な機能です。最大9600万画素(14K 13888×6944)の高解像度で撮れるのも大きな魅力の一つです。
露出ブラケットの設定は、1/3段毎に±0.3~±2.0まで、枚数は3、5、7枚まで細かく設定できるので本格的な撮影ができます。AEBはカメラにあまり詳しくない人には少し難しい機能かもしれませんが、撮影後は専用アプリQooCam Studioでdngファイルを開けば、自動的に1枚の写真に合成してくれるので編集作業は問題ないかと思います。
AEBの注意点としては、手持ちだとブレやすく綺麗に合成できなくなるので、カメラを三脚などに固定して撮影する必要があります。また、f1.6の明るいレンズの為、昼間の強烈な太陽光がある場合は完全に白飛びを抑える事ができない点がボトルネックとなります。アクセサリーで外付けNDフィルターがあると良いのですが…。
以下の作例は、白飛びしそうな雲の多い状況でもAEBモードで撮影したことで、しっかりと雲のディテールを再現する事ができました。最終的にPhotoshopで雲を強調してHDRっぽく仕上げています。
GPS内蔵
QooCam 3 UltraにはGPSが内蔵されていて、撮影した動画や写真に位置情報タグを追加し、撮影場所を正確に記録できるので 、Googleストリートビューなどにアップロードする際に有効です。
QooCam Studioで書き出す際にGPXの項目にチェックを入れば、動画ファイルと別途にGPXファイルが生成されます。
内蔵ストレージ+microSD
QooCam 3 Ultraは128GB(実質100GB)の内蔵ストレージが備わっていて、更に最大1TBのmicroSDも一緒に使用できるので非常に便利です。万が一microSDを付け忘れても、内蔵ストレージがあれば全く問題ありません。内蔵ストレージなのでmicroSDの相性が悪いなどでエラーが起きる心配がなく、ファイルサイズが大きくなりがちな動画撮影では非常に安心感があります。
冷却ファンが内蔵
QooCam 3 Ultraはには内蔵の冷却ファンがあり、カメラ設定は【録画静音】、【静音優先】、【冷却優先】の3種類で、強制的に冷却ファンを停止する設定はありません。常に冷却ファンが回っているわけではないので、あまり気になりませんが、静かな場所で動画撮影する場合は、外部のワイヤレスマイクを使用するなどの対策が必要かと思います。
また、専用編集アプリのQooCam Studioではノイズ低減設定があり、ある程度のノイズは除去できるので、通常の撮影ではあまり気にしなくても大丈夫かと思います。
QooCam 3 Ultraの主なスペック
QooCam 3 Ultraの主なスペックを表にまとめてみました。
QooCam 3 Ultra | |
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センサーサイズ | 1/1.7インチ |
F値 | F1.6 |
ISO感度 | 100~6400 |
サイズ(幅 x 高 x 奥) | 71.5 x 103.2 x 26.6mm |
重量 | 336g |
動画解像度 |
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360度動画 最大スローモーション 解像度 |
4K120fps |
写真解像度 | 9600万画素(13888×6944) 2400万画素(6944×3472) |
最大ビットレート | 150Mbps |
色域 | 8bit BT.709 10bit BT.2020 HLG |
バッテリー容量 | 2280mAh |
連続録画時間 | 50分 ※8K30fpsで撮影した場合 |
ストレージ | 内部ストレージ:128GB(実質約100GB) 外部ストレージ:microSDカード(最大1TBまで) |
防水 | 10m |
動作温度 | -20℃~40℃ |
その他機能 | タイムラプス インターバル撮影 DRブースト シングルレンズモード DNG8 AEB(自動露出ブラケット) |
発売日 | 2024年8月29日 |
価格 | 96,800円 |
総評
現時点で一般向けの360度カメラとしてはQooCam 3 Ultraが最強スペックではないかと思います。実際に使ってみた率直な感想は、万人向けと言うよりは、少し玄人向けで画質にこだわった360度動画や写真を撮りたいクリエーターには最適な感じがしました。
QooCam 3 Ultraにはカラープロファイルで色味を調整する設定がなく、編集時にソフトウェアを使って色調補正などを施して自分好みの映像や画像に仕上げる必要があり、編集作業が苦手な人には少しハードルが高いかもしれません。カラープロファイルやLUTに関してはファームウェアのアップデートで改善される可能性があるので、今後に期待したいところです。
また、DNG8やAEB撮影はカメラに詳しい人にとっては一歩上の写真を撮る際に非常に有効な機能ですが、気軽に撮りたい人が使いこなすには少し難しい機能といった印象もあります。その辺りは、やはり業務用のプロ向け機材を製造しているメーカーだからこその画質へのこだわりがQooCam 3 Ultraに反映されているのではないでしょうか?
良い点
- 8K@30fpsで360度動画が撮影可能
- 9600万画素(14K 13888×6944)の360度静止画が撮影可能
- 10bit BT.2020(HLG)で撮影が可能
- 動画だけでなく、静止画の画質にこだわった機能が満載
- AEB(自動露出ブラケット)撮影が可能
- GPS内蔵
- 内蔵ストレージ
悪い点
※ファームウェアのアップデートで改善される可能性があります
- カメラ側でカラープロファイルやシャープネスの強弱などの設定がない
- UIが少し使いにくい
- サイズが大きい&重い