見えない自撮り棒の360度カメラでお馴染みのInsta360 Xシリーズから、最新モデルのInsta360 X4が2024年4月に発売されました。やはり気になるのは前モデルのX3との違いかと思いますが、Insta360 X4の最大の特徴は何といっても8K動画に対応した事です。
今回はInsta360 X4の進化した主な特徴やX3とのスペック比較、実際に使ってみた使い勝手や性能などをレビューします。
進化したInsta360 X4の特徴
8K30fpsの360度動画が撮影可能
Insta360 X4の最大の特徴は、8K30fpsの360度動画が撮影できる事です。Insta360 X4に8K動画って必要なの?と疑問に思うかもしれませんが、Insta360 X4の360度の8K動画の解像度は7680×3840で、360度全方向を映し出した状態の8Kとなるので、一般的な8K解像度7680×4320の映像とは少し異なります。
もちろん8Kの360度VR動画としての映像も楽しめますが、360度動画を撮影後に好きなアングルを選んで4K(3840×2160)やフルHD(1920×1080)の映像として見る時は、360度動画の一部を切り取るリフレーミング処理を行うので、解像度の大きい8Kの方が解像感や繊細さを維持できるというメリットがあります。
以下はInsta360 X4の8K30fpsで撮影してリフレームしたサンプル動画です。撮影時のカメラの向きは常に前方で、パンやチルトは編集時のリフレームで行っています。
4K動画に書き出した場合でも元々十分な画素数があるので、非常に画質が綺麗です。以下は4K動画をスクリーンショットで保存し、等倍(100%)で切り出した画像です。細かなタイル状の壁のディテールが潰れることなく、再現できています。
バッテリーの大容量化
Insta360 X4のバッテリー容量は2290mAhで、 5.7K30fpsで135分の録画撮影が可能になり、前モデルのX3は81分だったので、67%も長く撮影できるように大容量になりました。これだけ長時間撮影ができるので、通常の撮影では予備バッテリーを持ち歩く必要もなく安心感があります。また、バッテリーが大容量化しても38分で80%、55分で100%の急速充電ができるという点は非常に使い勝手が良いです。
一台二役の4K60fpsシングルレンズモード
Insta360 X4は360度カメラだけではなく、片方のレンズだけで撮影するシングルレンズモードにすると、通常のアクションカメラのように動画が撮影できるのが特徴です。Insta360 X4のシングルレンズモードでは、最大4K60fpsの動画や3600万画素(3840×2160)の写真が撮影でき、まさにアクションカメラ要らずの一台二役の万能カメラです。
シングルレンズモードの動画撮影では通常動画に加えて、編集時にアスペクト比を変更できるFreeFrame動画での撮影も可能になっています。FreeFrame動画の場合は最大4K30fpsになりますが必要十分の実用的なスペックになっています。Insta360のFlowState手振れ補正もしっかりと機能するので、通常のアクションカメラやVlogカメラとしても使用できます。
シングルレンズモードで写真撮影するとinspと言う拡張子のファイルで保存され、スマホアプリもしくはデスクトップアプリを通してjpg形式に書き出す必要があります。最初からjpgで良いのでは?と思うのですが、inspファイルで保存されている事で、撮影後もアスペクト比を1:1、9:16、16:9のいずれかに変更できるというメリットがあります。
AIチップ搭載による恩恵
Insta360 X4には高性能なAIチップが搭載されていて、AIを活用した撮影機能が充実しています。
日本語音声制御やジェスチャー操作が可能
音声制御での日本語対応やジェスチャー操作などが可能になりました。
音声制御は、日本語で「写真撮影」「録画開始」「録画停止」「マークする」「電源オフ」の操作が可能です。ジェスチャー操作は「手のひら」をかざすと録画開始/停止、「ピースサイン」をすると写真撮影します。
AIハイライトアシスタント(AI自動編集)
AIハイライトアシスタントは、撮影中の動画をカメラ本体のAIが自動的にハイライトを分析し、Insta360アプリでの編集を高速化する機能です。動画編集が面倒なユーザーにとっては画期的な機能で、SNSで気軽に投稿したい人には最適です。
ただし、AIハイライトアシスタントをONにするとバッテリー消費が早くなったり、発熱しやすくなる点は注意が必要です。
便利な予約録画・録画キャンセル機能
少し地味ですが、非常に便利な録画機能がInsta360 X4に追加されました。
【予約録画機能】は、その名の通り指定した時刻に録画ができる機能で、撮影モードや様々な設定を細かく指定することが可能です。カメラを設置しておいて、朝日や夕日などのイベントのタイミングに合わせて自動的に撮影すると言ったような使い方ができます。
【録画キャンセル機能】は、動画撮影中に録画ボタンを長押しすると瞬時にその動画を削除できる使用頻度の高い便利な機能です。録画キャンセル機能を上手く使えば失敗動画を無駄に貯める事がなくなるのでSDカードの容量を節約できます。
Insta360 X4とX3のスペック比較
Insta360 X4とX3の基本スペックを比較表にしてみました。X3と比較するとサイズが若干大きくなりましたが、その分バッテリー容量が大きくなり、撮影時間が大幅に長くなりました。また、センサーサイズは1/2インチと据え置きですが、高性能AIチップ搭載により動画解像度やフレームレートの向上が図られています。
新しく発売されたInsta360 X4がフラッグシップモデルと言う位置づけで、前モデルのX3はエントリーモデルとして販売が継続されます。
X4 | X3 | |
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センサーサイズ | 1/2インチ | 1/2インチ |
サイズ (幅 x 高 x 奥) |
46.0 x 123.6 x 37.6mm | 46.0 x 114.0 x 33.1mm |
重量 | 203g | 180g |
動画解像度 |
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360度動画 最大スローモーション 解像度 |
4K100fps | 3K100fps |
最大写真解像度 | 7200万画素 (11904×5952) カメラ内AIノイズ低減機能付き |
7200万画素 (11968×5984) |
最大ビットレート | 200Mbps | 120Mbps |
バッテリー容量 | 2290mAh | 1800mAh |
連続録画時間 | 135分 | 81分 |
急速充電時間 | 38分で80% 55分で100% |
– |
ストレージ | microSDカード(UHS-I V30スピードクラス、1TBまで) | microSDカード(UHS-I V30スピードクラス、1TBまで) |
防水 | 10m | 10m |
動作温度 | -20℃~40℃ | -20℃~40℃ |
発売日 | 2024年4月16日 | 2022年9月8日 |
その他機能 | 日本語音声制御 ジェスチャー制御 AIハイライトアシスタント 予約録画 録画キャンセル カスタマイズボタン |
– |
Insta360 X4の注意点
microSDはUHS-IスピードクラスV30
Insta360 X4は8K動画も撮れると言う事なので、使用するmicroSDカードはある程度高速である必要があります。Insta360で推奨しているmicroSDカードは、UHS-I 、ビデオスピードクラスV30で最大容量1TBとなっています。
UHS-Iよりも高速なUHS-II規格のmicroSDはInsta360 X4は非対応なので注意して下さい。互換性のないmicroSDカードを使用すると、録画中に問題が発生し、映像が破損したり使用できなくなったりするので注意が必要です。
Insta360公式ホームページ「Insta360 X4 オンラインマニュアル」
Insta360公式が前モデルX3で動作確認している推奨microSDカードのSandisk Extreme V30シリーズは大丈夫かと思いますが、もし不安であればInsta360公式ウェブサイトで販売されているmicroSDカードを購入されることをおすすめします。
標準レンズガードは画質に注意
Insta360 X4に同梱されているねじ込み式で脱着が容易なプラスチック製の標準レンズガードは便利ですが、装着すると逆光のような強い光源があるとフレアやゴーストが発生しやすく画質が低下する可能性があるので注意が必要です。また、標準レンズガードはプラスチック製なので細かな傷が付きやすく、静電気でゴミも付着しやすいのが難点です。
実際に逆光の状況で標準レンズガードの画質を比較してみたところ、標準レンズガードなしの場合は2、3個のゴーストは発生しますが、気になる程の画質低下は無く許容範囲かと思います。一方の標準レンズガードを装着した場合は、光源付近や画面周辺に複数の丸型のゴーストや白っぽいフレアが発生して、画質の低下が確認されました。
スクリーンショットで切り抜いた画像よりも動画で比較するとその差は歴然で、スポーツ等でレンズを破損する危険性がある場合を除いては、標準レンズガードは装着しない方良さそうです。
8Kは熱停止する可能性が高くなる
Insta360 X4で8K/30fps動画を撮影すると大量データを処理するので消費電力が増すことで熱が発生し、カメラ本体が熱くなる傾向にあります。Insta360の公式ページには「*ラボ環境にて8K30fpsでの連続撮影時間は75分です。」となっていますが、夏場の屋外では、もっと短い時間で熱停止する可能性があるので、できるだけ長時間の連続撮影は控えるような工夫をするのが良いかもしれません。
Insta360 X4には標準でサーモグリップカバーと言うカメラ本体に装着して放熱するためのカバーが同梱されていますが、使用環境によってはどの程度の効果があるかは不明です。
8Kは暗所に弱い
やはりセンサーサーズが小さいInsta360 X4は、低照度の暗所で8K/30fpsで撮影するとノイズが目立ち画質が低下し、ブレが発生しやすくなります。低照度の状況ではInsta360 X4の液晶画面に警告マークが表示され、5.7K30fpsへの変更を促されるので、迷わず設定を変更することをおすすめします。
Insta360 X4向けのおすすめアクセサリー
見えない自撮り棒
Insta360 Xシリーズの定番中の定番の見えない自撮り棒は360度カメラを初めて使う人には必須のアクセサリーです。長さや素材、三脚機能付きなど様々な種類の自撮り棒があるので、自分の撮影スタイルに合わせて選ぶのが良いかと思います。
シリコン製レンズキャップ
撮影はしていないけど、自撮り棒などにカメラを付けたままInsta360 X4を持ち運びする場合、本体から飛び出た出目金レンズをカバーするレンズキャップがあると安心です。残念ながらInsta360 X4の標準版にはシリコン製のレンズキャップが付属されていないので、見えない自撮り棒とシリコン製レンズキャップがセットになったスターターキットがおすすめです。
Insta360 X4で撮影した動画の作例
Insta360 X4で撮影した動画は縦長に編集するのも容易なのでSNSとの相性は抜群です。
4K100fpsスローモーション
Insta360のアプリを使って360度写真を動画に変換
総評
8K動画対応になったInsta360 X4は、一眼カメラやスマホでは撮れない動画や写真を気軽に撮りたい方におすすめです。全天球動画の最大のメリットは、画角を気にせず撮影して編集時に必要な画角だけを切り取って使える点で、Insta360 X4なら高画質で行え、様々なエフェクトを加えられるInsta360のスマホアプリも秀逸なので、動画編集が苦手な方や初心者の方でも非常に扱いやすいかと思います。
Insta360 X4は、スポーツやアクティビティはもちろんですが、Vlogなどにも使えるオールマイティなカメラで、気軽に動画撮影してSNSにアップしたいと言う方にも非常におすすめです。