Insta360から発売されたライカ共同開発のAce Proは、1/1.3インチのイメージセンサーとAIチップを搭載し、最先端技術が詰め込まれたアクションカメラで、圧倒的な低照度性能で夜景などの暗所でもノイズが少なく高画質な動画撮影が可能です。
今回は、ライカ共同開発のアクションカメラInsta360 Ace Proを実際に使ってみた使い勝手や性能などをレビューします。
Insta360 Ace Proの基本機能・性能
Insta360 Ace Proの基本的な機能・性能は他のアクションカメラと比較しても不満の無いレベルです。
競合他社との基本スペックの比較
Insta360 Ace ProのライバルとなるGoPro Hero 12とDJI Osmo Action 4の3つの基本スペックを表にして比較してみました。3つのアクションカメラの基本スペックは、それほど大きな差はなく、似たり寄ったりと言った印象です。
【Insta360公式】 ⇒ Insta360 Ace Proの詳細ページ
Ace Pro | GoPro Hero 12 | Osmo Action 4 | |
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センサーサイズ | 1/1.3インチ | 1/1.9インチ | 1/1.3インチ |
サイズ(幅 x 高 x 奥) | 71.9 × 52.15 × 38.5 mm | 71.8 × 50.8 × 33.6 mm | 70.5 × 44.2 × 32.8 mm |
重量 | 179.8g | 154g | 145g |
写真解像度 | 48MP | 27.13MP | 10MP |
最大動画解像度 | 8K@24fps | 5.3K@60fps | 4K@120fps |
4K@最大fps | 4K@120fps | 4K@120fps | 4K@120fps |
最大ビットレート | 170Mbps | 120Mbps | 130Mbps |
バッテリー容量 | 1650mAh | 1720mAh | 1770mAh |
急速充電時間 | 22分で80% | – | 18分で80% |
防水 | 10m | 10m | 18m |
動作温度 | -20℃~40℃ | -20℃~35℃ | -20℃~45℃ |
発売日 | 2023年11月22日 | 2023年9月6日 | 2023年8月2日 |
サイズ感
Insta360 Ace Proの重量は179.8g、外寸は幅71.9mm x 高52.15mm x 奥38.5mm。
他のアクションカメラとサイズを比較すると、Insta360 Ace Proの方が30g程度重く、持つと少しずっしりとした感じはあります。ただし、外寸は数ミリ程度の差でほぼ同じ位で、特別に大きいと言った印象はなく、アクションカメラとしての使い勝手に影響はないサイズ感です。
手ブレ補正性能
Insta360 Ace ProのFlowState手振れ補正は、ジンバル要らずで超滑らかな動画が撮影できます。さらにFreeFrameモードであれば、45度もしくは360度カメラを傾けても水平維持して撮影する事が可能になります。
最近のアクションカメラの手ブレ補正の性能はどの会社も非常に優秀で、それほど大差はないと言った印象で、Insta360 Ace Proも非常に高性能です。できるだけ揺れない様に意識して撮影する必要はなく、普通に歩いたり走ったりしても非常にスムーズな映像になるので初心者でも簡単に扱えます。
Insta360 Ace Proの主な特徴や機能
1/1.3インチセンサー
Insta360 Ace Proのセンサーサイズはアクションカメラとしては大き目の1/1.3インチで、より多くの光を取り込み、広いダイナミックレンジにより高画質を実現しています。イメージセンサーの大きさは画質に大きく影響するので、1/1.3インチという大きさはかなり有利と言えます。
ちなみに、ライバルのGoPro Hero 12は1/1.9インチと小さく、DJI Osmo Action 4はInsta360 Ace Proと同じ1/1.3インチになります。同じセンサーサイズでも画像処理技術によって画質に差が出るのですが、Insta360 Ace Proは特に低照度性能でDJI Osmo Action 4を圧倒しています。
ライカと共同開発
カメラ好きならご存じのドイツの老舗高級カメラメーカーのライカと共同開発した最先端の光学設計と画像処理技術がInsta360 Ace Proには詰め込まれています。ライカのSUPER-SUMMARIT(スーパー・ズマリット F2.6 16mm)レンズを搭載した画質にこだわったアクションカメラです。
フリップ式タッチスクリーン
Insta360 Ace Proはフリップ式の2.4インチのタッチスクリーンを採用していて、アクションカメラでは他社には無い唯一無二の特徴で、Vlogでの自撮りやローポジション&ローアングル撮影では非常に便利です。
激しいスポーツで自撮りする時にスクリーンをフリップした状態だと破損する危険性があるので注意が必要です。そう言った場合は別売りのGPSプレビューリモコンを使うのがおすすめです。
Ace Proの2.4インチのタッチスクリーンの感度は良好で、メニューのユーザーインターフェースも分かりやすく直感的な操作ができるので、初めて使う人でもユーザーマニュアルを見なくてもある程度は使いこなせるのも、Insta360製品の特徴です。
Insta360 Ace Proの特筆すべき独自機能
暗所でも高画質
Insta360 Ace Proの最大の特徴は低照度の暗所でも高画質な動画が撮影できることです。1/1.3インチセンサーだけでなく、高性能なAIチップを搭載することで、低照度撮影でのノイズ低減や明るさの向上、ダイナミックレンジの改善を実現して、ライバルのアクションカメラを圧倒する性能になっています。
一般的なアクションカメラで薄暗い場所を撮影するとブレやモーションブラーが目立ちますが、Insta360 Ace ProのPureVideoモードで低照度手ブレ補正をONで撮影すると、高画質で滑らかな動画が撮影できます。既存のアクションカメラの概念を覆すほどの低照度性能です。
以下はPureVideoモードの4K@30fpsで低照度手ブレ補正をONで撮影した動画から画像にクロップしたものです。一枚目はマジックアワーの時間帯の薄暗い状況ですが、Insta360 Ace Proで撮影すると実際よりも明るく映すことができ、高感度ノイズ特有のザラザラ感が殆どなく非常に滑らかな仕上がりです。
次は日没後40分程経過した時間帯でテストしてみました。結構暗い環境にもかかわらず、肉眼で見ているよりも明るく映すことができ、ザラザラした目立ったノイズもなく想像以上に綺麗な画質に驚きました。
暗所の詳しいレビュー記事は以下からご覧いただけます。
クラリティーズーム
Insta360 Ace Proのクラリティーズームは、画質を損なうことなく2倍に拡大できる機能です。8K動画を撮影できる高画素センサーを利用した技術で、一般的なデジタルズームとは全くの別物で画質が良いので、撮影の幅が広がる良い機能の一つではないでしょうか。クラリティーズームしたい場合は、画面をダブルタップするだけの簡単操作で使い勝手が良いです。
以下がクラリティーズームのサンプル動画です。ズームレンズの様に徐々にズームするわけではなく、2倍に拡大した画面に切り替わるといった感じです。
4K@30fpsで撮影した動画から画像にクロップしたものです。
画像を100%に等倍拡大してみても、デジタルズームで発生する画像が荒くなるような劣化はなく、非常にクリアな画質を保っているのが確認できます。
ジェスチャー操作
音声による操作ができるアクションカメラはありますが、Insta360 Ace Proはジェスチャーによる操作も可能です。録画の開始・停止や写真撮影をジェスチャーでコントロールすることができるので、音声制御ができないような環境や周囲が気になる場合などでは便利かもしれません。
写真を撮影する場合はピースサイン、動画の録画開始と停止はカメラに向かって手のひらをみせるだけなので、非常に簡単です。
録画の一時停止・キャンセル機能
Insta360 Ace Proは、撮影中の録画を一時停止したり再開を繰り返すことが可能で、しかも一つのファイルとして生成する事ができます。また、撮影中の録画をキャンセルすると即座にファイルが削除され、ストレージ容量を節約することができる便利な機能があります。
撮影中の画面の下中央のボタンで停止、録画を再開する場合は再度下中央のボタンで再開。一旦撮影を終えた動画でもプレビュー画面から再度操作可能で、再開ボタンをタップし撮影すると一つのファイルとして生成されます。
録画をキャンセルする場合は、カメラ本体の録画ボタンを長押しすると記録中だったファイルを削除しキャンセルする事ができます。直ぐにファイルが削除されるのでストレージの容量の節約になり、プレビュー画面から削除する手間も省けるので、地味ですが非常に使い勝手の良いInsta360 Ace Proの神機能です。
アクティブHDR
Insta360 Ace ProのアクティブHDRは、明暗差の激しいシチュエーションで白飛びや黒潰れを抑えた動画を撮影できる機能で、動画モードの4K30fps以下の設定だと自動的にONになります。フレームレートが48fps以上の場合やモードがPureVideo、FreeFrameの場合はアクティブHDRは使用できません。
トンネルから出る瞬間は明るい部分が白飛びしやすくなるのですが、Ace ProのアクティブHDRだと白飛びを早い段階から制御してくれて、明るい部分の風景のディテールを映すことができます。また、逆光で自撮りしているような場面でも、測光モードを顔優先に設定すると顔が暗くならない様に制御してくれる非常に賢い機能です。
AIハイライト・アシスタント
Insta360 Ace ProのAIハイライト・アシスタントは、 撮影した1本の動画をカメラ内処理でAIが自動的に分析しベストショットを見つけ出しマークを付けてくれると言う画期的な機能です。
AIがマークしたハイライトクリップを選んで、個別に保存したり、もしくは1つの動画に統合すると言う作業がInsta360 Ace Proのカメラ内で処理できるので、編集時間の短縮とSDカードの容量の節約が可能になります。
Insta360 Ace Proの不満点・改善してほしい点
実際にInsta360 Ace Proを使ってみて、不満点・改善してほしい点がいくつかありました。
標準マウントがイマイチ
まず、Ace Proに同梱している標準マウントのフィット感がイマイチ良くないと言った印象です。個体差があるのかもしれませんが、カチッと音がするまでしっかりとマウントを押し込まないと直ぐに外れてしまうので注意が必要です。確実にツメが引っ掛かっているか確認することをおすすめします。
また、3プロングのネジ部分の表面がツルツルして滑るので、ネジを締めて固定しても激しいスポーツなどの揺れによってカメラの角度が変わってしまう恐れがあります。滑らないようなギザギザの加工を施す等の対策をして欲しいですね。
そして、標準マウントには1/4ネジ穴が無く、通常版の同梱物にもアダプターなどはありません。三脚などに取り付ける場合は、3プロング-1/4インチアダプターを別途で購入する必要があります。
以上の2点を考えると、別売りのクイックリリースマウントは必須かと思います。クイックリリースマウントは、標準マウントとは違い、確実にツメが引っ掛かり外れる事は無く、更にロックボタンもあるので絶対に外れる心配がありません。また1/4ネジもあるので三脚などその他のアクセサリー類にも取り付けやすく使い勝手が非常に良いです。また、3プロングのネジ部分の表面がギザギザになっているので確実に固定する事ができ、カメラの角度がズレる事はありません。
レンズカバーは外せない(交換できない)
Ace Proには標準で赤い縁取りを施したレンズカバーが装着されていますが、固定されていて外せない仕様になっています。万が一レンズカバーが破損もしくは傷ついた場合は、自分で交換する事ができず修理に出さないといけないので、アクションカメラ本来のラフな使い方をする人は、ちょっと注意した方が良いかもしれません。
一応、購入後1年以内であれば、レンズカバーの無償修理・交換をしてくれるとの事なので、少しは安心です。(Insta360の日本修理サービスセンターへの送料は自己負担となります。)
ただ、購入後2年目以降、レンズカバーの修理にいくらかかるのか不明で、ちょっと面倒くさいかも。
Log撮影ができない
ライバルのGoPro Hero 12やDJI Osmo Action 4は10bitでLog撮影が可能ですが、Insta360 Ace Proは8bitでLog撮影ができません。より広いダイナミックレンジの映像で色彩補正したいと言う一部のプロユースユーザーもいると思うので、Insta360 Ace Proにはあっても良いのではないかと思います。
ただ、Insta360 Ace ProはアクティブHDRや低照度での高画質撮影ができたり、カラープロファイルが豊富に用意されていて、標準、鮮やか、フラット、自転車、アーバン、夜景、スキー、海などシーンに合わせて選ぶことも可能なので、個人的にはLog撮影なしでも十分満足です。
Insta360 Ace Proの詳細スペック
絞り | F2.6 |
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35mm判換算焦点距離 | 16mm |
センサーサイズ | 1/1.3インチ |
動画解像度 | 通常動画 8K (16:9) : 7680×4320@24fps 8K (2.35:1) : 7680X3272@24fps 4K (4:3) : 4032×3024@60/50/48/30/25/24fps 4K (16:9) : 3840×2160@120/100/60/50/48/30/25/24fps 2.7K (4:3) : 2688×2016@60/50/48/30/25/24fps 2.7K (16:9) : 2688×1520@120/100/60/50/48/30/25/24fps 1440P (4:3) : 1920×1440@60/50/48/30/25/24fps 1080P (16:9) : 1920×1080@240/200/120/100/60/50/48/30/25/24fps |
FreeFrame 4K (4:3) : 4032×3024@60/50/48/30/25/24fps |
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PureVideo 4K (16:9) : 3840×2160@30/25/24fps 2.7K (16:9) : 2688×1520@30/25/24fps 1080P (16:9) : 1920×1080@30/25/24fps |
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スローモーション 4K (16:9) : 3840×2160@120/100fps 2.7K (16:9) : 2688×1520@120/100fps 1080P (16:9) : 1920×1080@240/200/120/100fps |
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写真解像度 | 4800万画素 (8064×6048) 3600万画素 (8064×4536) 1200万画素 (4032×3024) 900万画素 (4032×2264) |
動画フォーマット | MP4 |
写真フォーマット | JPG DNG (アプリまたはStudioで書き出し可能) |
動画モード | 動画(カメラ内アクティブHDR)、FreeFrame動画、 PureVideo、スローモーション、スターラプス、 タイムラプス、タイムシフト、プリ録画、ループ録画 |
写真モード | 写真、HDR写真、インターバル、バースト写真 |
動画コーデック | H.265 & H.264 |
最大動画ビットレート | 170Mbps |
カメラ性能 | 露出値:±4EV ISO感度:100~6400 シャッター速度:写真 1/8000~120秒、動画1/8000~フレームレートの逆数 ホワイトバランス:オート、2000~10000K |
音声ファイル形式 | 48 kHz, 16bits, AAC |
重量 | 179.8g |
サイズ (幅 x 高 x 奥) | 71.9 x 52.15 x 38.5 mm |
ストレージ容量 | 内蔵ストレージなし。最大1TBのmicroSDカードに対応 |
バッテリー容量 | 1650mAh |
充電時間 | 46分(30W急速充電アダプター使用時) 63分:5V/3A |
連続録画時間 | 100分 |
動作温度 | -20℃ 〜 40℃ |
その他 | Bluetooth 5.2 Wi-Fi 2.4GHz, 5GHz USB Type-C 6軸ジャイロスコープ 防水 10m |
総評
Insta360 Ace Proは、ライカとの共同開発や1/1.3インチセンサーなど画質へのこだわりを感じるアクションカメラですが、非常に使い易く、様々な撮影ができるので幅広いユーザー層にも受け入れられそうな印象です。
また、AIチップを搭載し最先端の処理技術を詰め込んでいる点も、他のアクションカメラよりもInsta360 Ace Proは一歩先をいっている感じがしました。低照度でのノイズ低減やジェスチャー操作、測光モードの顔優先、AIハイライト・アシスタントなど、AI技術を上手く活用したアクションカメラだと思います。
Insta360 Ace Proで一番衝撃的だったのは、やはり低照度でもノイズが少なく綺麗に撮影できることです。もちろん大型センサーの一眼カメラには画質の面では敵いませんが、一般的なアクションカメラと比べると雲泥の差の画質の良さで、しかも誰でも簡単に撮影ができると言うのは非常に大きなアドバンテージかと思います。夜景撮影でも積極的に使えるアクションカメラは非常に便利かと思います。
これからアクションカメラを購入しようとしている人は、最新技術が詰め込まれたInsta360 Ace Proがおすすめです。