ニュージーランドは待ちに待った天の川撮影の季節に入りました。ニュージーランドは南半球で日本とは季節が逆なので、本格的な天の川撮影シーズンは冬になります。本格的なシーズンに入る前にレンズの結露防止用のレンズヒーターを自作してみましたので、その方法をご紹介します。
以前、天の川撮影をしていた際に、帰り際になってようやくレンズが結露して曇っていたことに気付き、その日に撮影した写真のほとんどは残念な仕上がりになってしまいました。まさかレンズが結露するなんて全く知らず、苦い経験をしました。
自作レンズヒーターに必要な材料
ニュージーランドではレンズヒーターを自作する上で必要なものが手に入りにくかったり高額だったりと何かと不便なので、昨年日本に一時帰国した際に100円ショップなどで購入してきました。
電源供給はUSB接続できる手軽なモバイルバッテリーにすることにしました。
- ニクロム線(0.32mm 13.77Ω/m)
- 釣竿バンド(ロッドベルト)
- 耐熱両面テープ
- USBケーブル
- 熱収縮チューブ
- 保冷・保温バッグ
- 圧着スリーブ
最適なニクロム線の長さは、レンズの外周の2倍+α
実際にニクロム線の太さや長さはどうすれば良いのか悩むと思いますが、レンズヒーターに最適なニクロム線の選び方を解説します。
実は私の場合は、長さを考えずに、いろいろな人のインターネットの記事を見て直径0.26mmのニクロム線を購入したのですが、いざ作ろうとしたら中途半端な長さになり、使うことなく無駄になってしまいました。結局、ニュージーランドで別のニクロム線を購入する羽目になりました。
ニクロム線を買う前に、レンズの外周を計測する
ニクロム線が中途半端な長さになると線を配置するのが難しくなるので、レンズの外周を把握する必要があります。また、予めレンズの外周をチェックしておくことでロッドベルトが短すぎた!などの失敗も防げます。
使用するニクロム線の長さは、レンズの外周の約2倍+αがベストだと思います。
その理由は、配線が簡単だからです。単純に直列で繋いで輪を作るだけでOK。プラスアルファの分はUSBケーブルと接続するために少し余裕を持たせます。プラスアルファがないと仕上がりは若干短くなってしまいます。
長すぎると何回も折り返したりしなくてはいけなく、ニクロム線同士が近すぎるとショートする可能性も高くなります。逆に短すぎると、範囲が狭くなりがレンズを温めることが出来なくなってしまいます。
抵抗値は10~8Ω位がちょうど良い
ニクロム線を長くすると抵抗が増え、温度が下がり、逆に、短くすると抵抗が減り、温度が上がり熱くなります。
今回は、USB接続できるモバイルバッテリー(出力DC5V、最大電流1A)から電源を取るので、電流を1A以下に抑えて尚且つ適度な発熱をさせるには、抵抗を10~8Ω位にします。恐らく一般的なモバイルバッテリーなら、同じように10~8Ω位で大丈夫だと思います。
抵抗値 = V ÷ A(流す電流)
私の場合は、星空撮影で使用しているレンズがSAMYANG 14mm f/2.8でレンズの外径が約28cmなので、USBケーブルと接続する為に少し余裕を持たせ、ニクロム線を約60cmにしました。購入したニクロム線の抵抗は13.77Ω/mなので、実抵抗は約8.3Ωになります。
失敗しない最適なニクロム線の選び方
以上のことを踏まえて、ニクロム線を購入する時に、抵抗値が予め分かるものを選ぶと良いと思います。抵抗値が分かっていれば、自分の必要な長さも分かるからです。短すぎたり、長すぎたりという失敗がなくなります。
表記は1メートル辺りの抵抗値の場合が多いようですが、中には1フィート表記のものもあるので購入する場合は必ずチェックしてください。
ですので、直径で選ぶのではなく抵抗値で選ぶことが重要です。
例)15.42 Ohm/mのニクロム線
1メートルあたり15.42Ωなので、65cmで使う場合は
使用時の抵抗値 10.023Ω = 15.42Ω × 0.65m
レンズヒーターの作り方
ロッドベルトをレンズに合わせて切り、両面テープを張る
ロッドベルトを実際のレンズに装着してみて、余分な部分を切ります。
今回自作したレンズヒーターは、主にSAMYANG 14mm f/2.8のレンズでの使用を想定したので、レンズフード部分にケラレが出ないで巻き付けられるように細目に切りました。購入したロッドベルトの幅が5センチあり、太すぎたので半分の2.5センチにしました。
切ったロッドベルトにニクロム線を固定するための耐熱両面テープを張ります。
少し長めにニクロム線を切る
ロッドベルトに合わせて、実際の仕上がりよりも少し長めにしてUSBケーブルと繋ぐ部分を考慮してニクロム線を切ります。
仮でUSBケーブルに接続して温度チェック
USBの充電ケーブルのいらない部分を切断し、ニクロム線をビニールテープなどで仮止めして、実際にモバイルバッテリーを繋ぎ、温度をチェックする。
温度を上げたい場合は、ニクロム線を少し切って短くします。
ニクロム線を両面テープに貼り付け固定する
ニクロム線同士が接触しないように注意してください。線同士が接触するとショートの原因になり危険です。
ニクロム線の両端(USBケーブルと接続する方)を外側に貫通させておきます。ロッドベルトは柔らかい素材なので、ニクロム線を突き刺せば簡単に貫通します。
保冷保温バッグ素材を貼り付ける
ニクロム線だけだと暖かい面が狭いので、100均で購入した保冷保温バッグを両面テープと同じ大きさに切って貼り付けます。アルミテープなど他の素材でも良いかと思います。
保冷保温バッグは柔らかくて加工が簡単なのでおすすめです。
ニクロム線とUSBケーブルを接続して完成!
圧着スリーブを使い、ニクロム線とUSBケーブルを繋ぎ合わせます。
圧着させる前に、両方の線がショートしないように絶縁させるため、熱収縮チューブも一緒に線に通しておくことを忘れずに!
更に仕上がりを綺麗に見せたい場合は、太めの熱収縮チューブを結合した部分全体に使うとスッキリします。
まとめ
初めてレンズヒーターを自作したのですが、意外と簡単に作れました。既製品のレンズヒーターを買うより全然安くて出来ちゃいます。
一番悩むのがニクロム線選びですが、正しいニクロム線を見つけてしまえば簡単です。材料が余っているので、さらに改良を加えた第2弾も作ろうと思います。