三脚使用時の一眼カメラの縦横位置の切り替えが劇的に楽になるカメラ回転リングのATOLLが発売されてから2年ほど経ち、新型のATOLL+(プラスバージョン)が登場しました。ソニーE用がATOLL S+、キヤノンRF用がATOLL C+、ニコンZ用がATOLL D+、大型カメラ用がX+と大まかな分け方となっています。
今回はニコンのZシリーズ向けに進化したATOLL D+の使い勝手などを詳しくレビューします。
カメラ回転リングATOLLとは?
ATOLLとは一眼カメラを三脚に固定した状態のまま、カメラを回転するだけで縦位置、横位置への切り替えが可能になる便利なカメラグッズです。
望遠レンズの三脚座のような見た目のATOLLは、回転リングが二層構造になっていて、内側と外側のリングが独立して回転するようになっています。内側のリングがカメラ本体の底にあるネジに固定、外側のリングを雲台側に固定して使います。
ATOLLなら雲台から取り外さなくても縦横の切り替えができ、しかもレリーズケーブルやUSBケーブルなどの差込口とも干渉しないといったメリットがあり、L型ブラケットよりも遥かに便利です。
ATOLLの詳しい特徴や使い勝手は以下の記事からご確認頂けます。
ATOLLは、台湾とアメリカの写真愛好家と専門家でメンバー構成されたSILENCE CORNERという台湾を拠点としている会社の製品です。
旧型と新型ATOLL D+の違いや特徴
Nikon Z向けのATOLL D+
初代ATOLLは、Nikonのミラーレス用はATOLL Cが推奨されていましたが、カメラ本体の前面にあるファンクションボタンが押せないなど使い勝手が悪いという事で導入をためらっていた方もいるか思いますが、新型のATOLLプラスバージョンからは、ATOLL D+が主にNikon Zシリーズ(ミラーレス)向けとなりました。
※他メーカーの一部機種でも使用できます
カメラ互換性は公式ウェブサイト(英語)の【ATOLL compatible list】から確認できます。
レンズ操作に支障がなく、グリップが握りやすい
ATOLL D+だと、ATOLLの回転リングとカメラ本体との隙間が広くなるので、ニコンのカメラ前面にあるファンクションボタン、レンズにあるボタンやスイッチの操作がしやすく、またグリップも握りやすいのが特徴です。
ATOLL D+は延長プレートが同梱されていてカメラとの距離を長く調整できるようになっています。
揺れを軽減するスタビライザー&拡張ブラケット
ATOLLのプラスバージョンからカメラの揺れを軽減させるためのスタビライザーが追加されたました。ATOLLの回転リングとカメラとの距離が長くなると揺れやすくなるのですが、支えとなるスタビライザーがあることでカメラの揺れを軽減してくれます。
ATOLL D+は回転リングとカメラとの距離が長くなるので、スタビライザーに装着できる拡張ブラケットが同梱されています。拡張ブラケットを装着することでカメラ本体から回転リングが離れた位置にある場合でもより高い安定性を維持できるようになります。拡張ブラケットは簡単に取り外しが可能なので、カメラやレンズに合わせて脱着して使い分ける事ができます。
カメラ本体と拡張ブラケットを密着させることでATOLLの振動を大幅に軽減できるようになります。
より締めやすくなった固定ノブ
ATOLLの回転台を固定するノブが新しい形状になり、より締めやすくなりました。
ATOLL D+の注意点
別売りのハイトニングプレートはあった方が良い
ATOLL D+はNikonのZシリーズで使用できますが、カメラとの高さを調整する為に別売りのハイトニングプレートがあったほうが良いです。回転リングとの高さを調整するにはATOLL本体を分解して調整することも可能ですが、面倒な場合はハイトニングプレートを使用するのが簡単でおすすめです。
ハイトニングプレートで高さ調整する場合
ATOLL D+に付属された延長プレートに、別売りのハイトニングプレートを取り付けるだけで、NikonのZシリーズのカメラが丁度良い高さになります。
ATOLLを分解して高さ調整する場合
ATOLLを分解して高さ調整する場合は、Silence Corner公式動画を参考にしてみてください。
※分解するとリング内部にグリースが塗ってあるので注意が必要です。
Nikon Z8とZ9は例外
ATOLL D+はニコンのZシリーズのほとんどに対応していますが、Z8とZ9は他の機種と比べるとカメラ本体のサイズが大きいので、ATOLLを使う場合は注意が必要です。
Nikon Z8はATOLL D+でも大丈夫ですが、別売りのTwo-wayプレートが必要になります。
Nikon Z9はATOLL D+は装着不可なので、大きいカメラ向けのATOLL Xでの対応となります。
ATOLL Xはリングの内径が90mmあり、Two-wayプレートも標準で同梱されていて、様々なカメラや大きいレンズにも対応できるので、Nikon Z8やZ9ならATOLL Xがおすすめです。
ATOLL Xの詳しいレビューは以下からご確認ください。
大きいレンズは装着できない可能性あり
ATOLL D+の回転リングの内径は75mmなで、それ以上の大きいレンズは装着する事ができないので注意が必要です。また、超望遠レンズのような重量のあるレンズもあまり相性が良くないので、無理にATOLLを使わずに、レンズの三脚座を使用した方が良いかと思います。
ATOLL D+はマウントアダプター装着でも使えるの?
ニコンZシリーズにマウントアダプターを使用している場合、マンウントアダプターが直径75mm以内で、特殊な形状や突起物がなければ、ATOLL D+を装着することができます。
ただし、装着するレンズに関しては、ボタンやスイッチ、絞りリングなどの位置によっては、操作に支障が出る場合もあります。
ニコン純正マウントアダプターFTZ & FTZ II
Silence Corner公式によると、ニコン純正のマウントアダプターFTZ IIであればATOLL D+で使用可能ですが、旧型のFTZだとレンズの中心に完全に合わせることができないとの事です。おそらくFTZは三脚座付きで特殊な形状をしているのでATOLL D+には装着はできないかもしれないので注意が必要です。
レンズを交換する場合、FTZ II側にあるレンズ取り外しボタンが回転リングと重なってボタンが押しにくくなるので、レンズ交換は少し苦労するかもしれません。
SHOTENマウントアダプターNF-NZ
電子接点無しのニコンFからZへのマウントアダプター、SHOTENのNF-NZをATOLL D+に試してみた所、外観サイズはFTZ IIとほぼ同じなので問題なく装着できました。レンズによっては、絞りリングがレンズの根元付近にあって、操作がしにくくなる場合もありますが、大抵のレンズは使えるかと思います。
ただし、レンズを交換する場合、マウントアダプター側にあるレンズ取り外しボタンが回転リングと重なってボタンが押しにくくなるので、カメラ側のレンズ取り外しボタンを押してマウントアダプターごと外す必要があります。
Megadap ETZ PRO
ソニーのEマウントレンズをニコンのZマウントで使用できる薄型の電子マウントアダプターのMegadap ETZ PROは、ATOLL D+に問題なく装着できます。直径75mm以下のレンズであれば快適に使用する事が可能ですが、直径75mm以上レンズは装着できない可能性が高いので注意が必要です。ちなみに、ソニーFE 24-105mm F4 Gは装着できませんでした。
新型ATOLL+はどこで購入できるの?
新型ATOLL+は、現時点ではSilence Cornerの公式ウェブサイトからの購入のみとなります。送料無料で日本への発送もしてくれるので、興味のある方は是非チェックしてみてください。
総評
Nikon Z向けになったATOLL D+は、カメラ本体とATOLLの回転リングとの隙間に余裕があり、グリップが格段に握りやすくなり、更にカメラ前面のファンクションボタンも押せるように進化したのは非常に大きなポイントかと思います。また、揺れを軽減してくれるスタビライザーは、カメラと回転リングとの距離が長くなるATOLL D+で非常に有効な機能です。
ATOLL D+はNikon Z本体とZレンズであれば、ほとんど問題なく快適に使用で、Nikon Zにマウントアダプターを使用している場合でも、大きいレンズを除けば、使えるレンズの幅も広いので使い勝手は良いかと思います。旧型ATOLLで購入をためらっていた人にはATOLL D+はおすすめできます。
今回はNikon Z向けのATOLL D+をレビューしましたが、それ以外のカメラの互換性は公式ウェブサイト(英語)の【ATOLL compatible list】から確認できます。