自分のカメラのダイナミックレンジの限界をご存知ですか? 逆光など明暗差の激しい場面で撮影すると明るい部分が白飛びしたり、暗い部分は黒潰れを起こしてしまいます。原因はダイナミックレンジの領域を超えてしまっているからです。
今回はダイナミックレンジの理解を深め、白飛び・黒潰れを抑え最大限に活かせる撮影方法を解説します。
カメラのダイナミックレンジとは?
カメラ用語で使われるダイナミックレンジとは、カメラのセンサーが再現できる明るさ(輝度)の領域の事をいいます。この明暗差の領域が広いと、ダイナミックレンジが広いと言う事になります。
高性能なカメラでセンサーサイズが大きいほどダイナミックレンジが広い傾向にあり、明るい部分や暗い部分を階調豊かに表現することができます。しかし、どんなに高性能なカメラであっても、人間の目の方がダイナミックレンジが広く優れています。
ダイナミックレンジの広い機種
一般的にセンサーサイズが大きいフルサイズ機の方がAPS-Cよりも有利で、新しい機種の方がダイナミックレンジが広い傾向にあります。
ニコンはダイナミックレンジが比較的広く黒に強い、一方のキャノンはダイナミックレンジはニコン程広くないが白に強いと言われています。また、ソニーの機種もダイナミックレンジが広く人気があります。
ダイナミックレンジを比較できるサイト
DxOMark
DxOMarkというウェブサイトで各カメラのダイナミックレンジの数値を簡単に調べることが出来ます。ただしメーカーが公表した数値ではなくDxOMark独自に計測したものなので多少の誤差はあるのであくまで目安とするには丁度良いと思います。
試しに、ニコンD850を調べてみると、Landscape (Dynamic Range) という項目が14.8 Evsとなっています。このEV(段)数が高ければ高いほどダイナミックレンジが広いと言う事になります。ニコンD850はトップクラスです。
参照:https://www.dxomark.com/Cameras/Nikon/D850
Photons to Photos
ISO値とダイナミックレンジの変化をグラフ化して、古い機種から最新機種までほとんどのカメラを網羅していて、簡単に比較できるサイトです。
Photographic Dynamic Range versus ISO Setting
試しにNikon D850、Canon 5D Mk IV、Sony α7R IIIのライバル3機種のダイナミックレンジを比較してみました。Nikon D850は低感度、Canon 5D Mk IVは高感度、Sony α7R IIIは低感度から高感度まで全体的にダイナミックレンジ広いと言う事が分かります。ISO値の違いによる変化が一目で把握できて非常に便利です。
白飛び・黒潰れの原因
写真で白飛びや黒潰れが起こる原因は、明暗差が激しすぎるとカメラのダイナミックレンジの領域を超えてしまい明るさ(輝度)を再現することが出来ずに、明るい部分は真っ白に飛び、暗い部分は真っ黒に潰れてしまいます。
日常的な光の下であっても、全ての明るさをカバーできるカメラは存在しないので、明暗差の激しい場面では白飛びや黒潰れが起こるものだと思っていた方が良いでしょう。
以下の例では、逆光で夕景撮影したので明暗差が激しくなり、ダイナミックレンジ内では収まりきらず、太陽光の明るい部分が白飛びし、景色の一部が暗すぎて黒潰れを起こしています。分かり易いように白飛びは赤、黒潰れは青でハイライトしています。
撮影現場で白飛びや黒潰れを確認するには、カメラでヒストグラムを確認すれば一目瞭然です。明るさがどちらかに偏り過ぎている場合は、露出を調整することで白飛びや黒潰れを軽減することが出来ます。
ダイナミックレンジを活かした撮影方法
高性能な一眼レフカメラでも明暗差の激しい状況では限界があるので、ダイナミックレンジを最大限に活かした撮影方法をすれば、カメラの性能をフル活用することが出来ます。
ISO値は基準感度
ISO値を基準感度にすることでダイナミックレンジが最大限になり、ノイズ、色再現性などの面から最も画質が良い状態になります。ISO感度を増やせば増やすほどダイナミックレンジが狭くなっていき画質も低下していきますので、出来るだけ基準感度に近い値で撮ることがポイントです。
RAW保存する
もう一つ重要なポイントとして、RAWファイルで保存することでダイナミックレンジを最大限に活かすことができます。RAWファイルはより多くの色情報を持つことが出来る為、多少の露出オーバーや露出アンダー気味の写真でも現像段階である程度復元することが可能です。
しかし、JPEGファイルの場合は色情報が少ない為、狭い領域での階調表現になってしまい白飛びや黒潰れを復元することが難しくなります。
HDR撮影
HDR(ハイダイナミックレンジ)は、一回の撮影では撮り切れない明暗差を、ブラケット撮影を使い露出を変えて2回ないし3回に分けて撮影し、明るい部分と暗い部分の良いとこ取りして合成する方法です。
ストロボやレフ板を活用する
ストロボやレフ板を使用して暗い部分を明るくすることで、極端な明暗差を無くしてできるだけダイナミックレンジを活用することができます。ただし光りの当て方を間違えると不自然になったり、立体感の無い写真になるので、特にストロボを使用する場合は、最低限のライティングの知識を身に着けておくと失敗がなくなります。
角型ハーフNDで領域を狭める
朝日や夕日を撮影する時は明暗差が激しくなるため、角型ハーフNDフィルターを使う事で太陽光の明るい部分を暗くして明暗差を少なくして、白飛びや黒潰れを回避することができます。
まとめ
カメラのダイナミックレンジは広い方が良いのですが、カメラの機種によるダイナミックレンジの差と言うのは極わずかで、白飛び・黒潰れは完全に回避することは不可能です。白飛び・黒潰れを気にしすぎるあまり、シャッターチャンスを逃してしまっては意味がありません。
主題となる被写体をどのように写したいのかと言うことを念頭に置くことが何よりも重要ではないでしょうか?