カメラ用語で被写界深度という言葉を耳にする事があると思いますが意味をご存じですか?『絞り』、『焦点距離』、『被写体との距離』の3つの要素と被写界深度の関係性を理解することで、ボケ具合を自由自在にコントロールできるようになります。
今回は、被写界深度とは何なのか、その意味を分かりやすく図解し、3つの要素によるボケの違いをサンプル写真と一緒に解説します。
被写界深度とは?
被写界深度とは、被写体にピントを合わせた時、その前後のピントが合っているように見える範囲のことを言います。英語では『Depth of Field(DOF)』で、直訳すると『領域の深さ』と言う意味になり、こちらのほうが想像が付きやすいかと思います。日本語で使っている『被写界深度』のほうがカメラ用語っぽくて分かりにくいですね。
被写界深度が浅い
被写界深度が浅いと言うのは、ピントが合っているように見える領域が浅く、ボケ具合の大きい写真になります。ボケを活かした写真を撮影したい場合は、被写界深度を浅くします。
マクロやポートレート撮影などで被写界深度が浅くなる場合は、ピント合わせがシビアになり難しくなります。
被写界深度が深い
被写界深度が深いと言うのは、ピントが合っているように見える領域が深く、全体がシャープでボケ具合が少ない写真になります。
風景写真では被写界深度を深くして全体にピントが合うように撮影する事が多いかと思いますが、全てにピントがあった状態をパンフォーカスと言います。
被写界深度をコントロールする3つの要素
被写界深度は、絞り値、レンズの焦点距離、被写体とカメラの距離の3つの要素で変化するので、その数値を意図的に変えればボケ具合をコントロールすることができます。
- 絞り値(F値)
- 焦点距離
- 被写体との距離
絞り値(F値)
レンズの絞り値が小さくなるほど被写界深度は浅くなりボケやすくなり、逆に絞り値が大きくなるほど被写界深度は深くなりピントの合う範囲が広がりボケが少なくなります。
焦点距離
焦点距離が長い望遠レンズほど被写界深度は浅くなりボケやすくなり、逆に焦点距離が短い広角レンズほど被写界深度は深くなりボケが少なくなります。
以下の例では、焦点距離を50mmと120mmで撮影した時の被写界深度の比較です。絞りや被写体との距離は全く同じですが、望遠の120mmのほうが背景のボケが大きくなっています。望遠レンズほどボケやすいというのがわかると思います。
被写体との距離
被写体とのカメラの距離が近いほど被写界深度は浅くなりボケやすくなり、被写体との距離が遠いほど被写界深度は深くなりボケが少なくなります。
以下の例では、絞り値、焦点距離は同じで固定にした状態で、被写体との距離を変えて撮影しています。被写体との距離が遠いほうが被写界深度が深くなり、背景のボケが少なくなっています。
ボケ具合を大きくする条件
ボケを大きくするということは、被写界深度を浅くすれば良いので、できるだけ絞り値を小さく、望遠レンズ、被写体に近づきます。
絞り値 | 焦点距離 | 被写体との距離 |
---|---|---|
小さい | 望遠 | 近い |
ポートレート撮影では、F値の少ない明るい中望遠や望遠レンズが好まれるのは、背景をぼかしやすいからです。
まとめ
被写界深度は文字だけだとわかりにくいですが、ピントの合っている領域と考えれば、非常にシンプルで簡単です。『絞り』、『焦点距離』、『被写体との距離』の3要素でボケ具合がコントロールできることを理解していれば、被写界深度という言葉を無理に覚える必要はないかもしれません。
ただ、カメラの解説書や雑誌、ウェブサイトなどでは被写界深度という言葉がたびたび登場するので、覚えておいて損はないかと思います。