星の軌跡を撮影する方法は2種類あり、1つは通常の星空撮影と同じ方法で30~120分ほどインターバル撮影しPhotoshopなどの写真編集ソフトで比較明合成するやり方です。もう1つは、シャッターを開けっぱなしにして1枚の写真で撮影するやり方ですが、露出の調整が難しいのが難点です。
今回は簡単でメリットも多い比較明合成で星の軌跡を撮影する方法を解説します。
星の軌跡を比較明合成するメリット
撮影時のカメラの設定が簡単
複数枚の星空写真を比較明合成する場合は、通常の星空・星景を撮る時と同じカメラ設定にして、あとはインターバル撮影するだけでOKです。特に星の軌跡だからと言って設定を変える必要は特にありません。
しかし、1枚写真で星の軌跡を撮影する場合は、丁度良い明るさにするのが難しく、星の軌跡の長さが予想しにくく、絞りやISO、シャッター速度などカメラの設定をそれらに合わせて調整する必要があります。
編集時に柔軟な修正が可能
1時間近く星空をインターバル撮影していると、飛行機やヘリコプター、車のヘッドライトなどの不要な光、雲などが写りこむ時があります。しかし、比較明合成する方法であれば、不要な写真だけ削除したり、不要な部分だけをマスクしてしまうと言った対処が可能です。
また、多めに撮影しておけば、1時間撮影した中でも良い時間帯だけを選んで比較明合成すると言うやり方もできるのが大きなメリットです。
一方のシングルショットで星の軌道を撮影した場合、不要に写りこんだ光を削除するのは結構大変な作業になり、場合によっては綺麗に修正出来ない場合もあります。また、雲が出てきてしまったらその時点で台無しになってしまいます。
多めに撮影すればタイムラプス動画にも出来る
星空をインターバル撮影すると1分に2枚、1時間で120枚の写真が出来上がります。そんな時はタイムラプス動画にしてみるのもおすすめです。1秒24コマの動画であれば、120枚あれば5秒の動画にすることが出来ます。
普通に星空のタイムラプスでも良いですし、星の軌跡をタイムラプスにしても面白いと思います。少し長めに撮影しておけば、静止画と動画の一石二鳥の楽しみがあります。
星の軌跡を撮影する為の道具とカメラ設定
必要な道具
三脚
星空をインターバル撮影するので出来るだけ安定した三脚が必要です。三脚にフックが付いていると重りをぶら下げて安定させることもできます。
インターバル撮影機能付きレリーズ
カメラ本体にインターバル撮影機能が無い場合は、タイマー機能付きのレリーズが必要になります。
カメラの設定
基本的には通常の星空撮影のカメラ設定で大丈夫です。
モード:マニュアル
絞り:f2.8前後
ISO:800~6400
シャッタースピード:15~30秒
撮影時間:30~120分(軌跡を長くする場合は2時間以上)
その他の詳しい星空撮影方法は以下の記事でご確認ください。
タイムラプス動画の為のインターバル撮影方法は以下の記事でご確認ください。
必要な撮影枚数と時間の目安
シャッタースピードによって撮影枚数や撮影時間は変わってきますが、以下を目安としてお考え下さい。
撮影枚数
星の軌跡の仕上がり具合は明るさや撮影時間の長さによって変わってくるのですが、目安として100枚前後あれば大丈夫です。比較明合成なら軌跡の状態を見ながら写真の枚数を調整できるので、撮影枚数は少し余裕をもって多めの方が良いでしょう。
星の数が多い場合は、撮影枚数が少なめでも星の軌道がある程度線状になります。それでも最低30枚ほどは必要になります。
逆に星の数が少ない場合は、撮影枚数を若干多めにして合成する必要があるので100枚以上は用意しておいた方が良いと思います。
撮影時間
撮影時間は星の軌道の長さに比例してきます。少し星の軌道を長くしたい場合は1時間以上は撮影する必要があります。例えば、30秒のシャッタースピードで撮影した場合は、30分で60枚、1時間で120枚になる計算です。
撮影時間を長くすればするほど、星の軌跡が長くなり見栄えも良くなりますが、その分撮影枚数も増えるので、編集に時間がかかってしまいます。
星の軌跡を綺麗に撮るコツ
星の軌道を把握してロケーション決定
どの方角で撮影したら、星の軌跡が円状になるのか、または半円になるのか等々、星の動く方向を把握して、仕上がりのイメージを掴んでおく事が重要です。
北半球なら真北の方角、南半球なら真南の方角を撮影すると星の軌道がクルクル回る円状になります。
自分の撮影したい星の軌跡をイメージした後で、その方角で撮影できるロケーションを探すのが良いかと思います。例えば、星がクルクルの円軌道の写真をイメージしたら、真北の方向で撮影できる場所を探します。
その際、有名なランドマークや特徴のある木、建物、風景、絶景などと一緒に撮ると写真がより一層魅力的になります。
晴天の日を選ぶ
雲があると綺麗な星の軌跡に仕上がらないので、出来るだけ雲の無い晴天の日を選ぶようにしましょう。現場で雲がかかっていたら、焦らず雲がなくなるまで気長にシャッターチャンスを待つ事も良い写真を撮る秘訣です。
天の川が入らない方角
星の軌跡を撮影する場合は、天の川が画角に入ってしまうと、星が密集しすぎて白くぼんやりした感じになってしまうので、出来るだけ天の川が入らない方角を選ぶのがポイントです。
季節によって天の川の見える方角や時間帯が変わってくるので事前にチェックしておきましょう。
明る過ぎない場所
光害の影響で空が明る過ぎて写る星が少ない場所だと、星の軌跡が少なくなって迫力に欠けてしまいます。星の軌跡を撮影するなら天の川が写せる位暗くなくても問題ありませんが、できるだけ星が多く見える暗い場所を選ぶのがコツです。
月の入らない方角
当たり前ですが月が画角に入らないようにしましょう。月は思っているよりも明るいので月齢や月の出ている方角にも気を付けて、空の明るさを把握する事がポイントです。
星の数が多すぎる場合
写る星の数が多いと比較明合成した際に星の軌道が多すぎて煩くなる場合があるので、そんな時はISO感度を下げたり、F値を上げたりして、星の数を減らすとスッキリした仕上がりになります。
ただし、少し暗めに設定すると景色も一緒に暗くなるので注意してください。
写真加工ソフトで比較明合成する
複数枚の写真をレタッチソフトで比較明合成する方法は簡単です!
Photoshopで比較明合成
- ファイル > スクリプト > ファイルをレイヤーとして読み込み
- 読み込む画像を全て選択し、OKをクリック
- 全てのレイヤーを選択して、「比較(明)」にするだけ
Photoshopなら、飛行機やヘリコプターなどの不要な光が写りこんでしまった場合でも、その部分だけ簡単に削除することも可能です。また、星の数が多すぎて少し煩い場合は、不要なレイヤーを削除することで枚数を調整することもできます。
無料ソフトSiriusCompで比較明合成
無料のソフトSiriusCompでも簡単に星の軌道を比較明合成できます。標準でjpgとtiffの画像形式に対応していて、UFRawというフリーソフトと組み合わせるとRAWファイルも扱う事ができます。
また、画像を比較明合成すると同時にタイムラプス動画も書き出すことが可能で、「比較明合成モード」にすると星の軌跡が徐々に長くなっていく動画に仕上がります。
まとめ
星の軌跡撮影は、通常の星空撮影の延長で比較的簡単にでき、特に難しい加工技術も必要なく一眼レフカメラ初心者の方でも気軽に楽しめるのではないでしょうか? 天の川が見えるほど真っ暗な場所でなくても、ある程度の星が写れば綺麗な星の軌跡にすることが出来るので是非チャレンジしてみて下さい。