今回は、一眼カメラを使った紅葉の撮影テクニックを詳しく解説します。最適なレンズやカメラの設定からおすすめの時間帯など、紅葉の美しさを最大限に引き出すための撮影方法をご紹介します。
一眼カメラを使って紅葉の風景を撮影すると、その美しさをより鮮明に表現することができます。紅葉の季節は、美しい自然の変化を捉えるのに最適な時期なので、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
紅葉撮影に必要な機材
紅葉を撮影する上でテクニックも重要ですが、自分の撮りたい被写体に合わせた機材を揃えておく事も重要になります。
最適なレンズ
紅葉をどのように撮影するかによって焦点距離が変わってくるかと思いますが、標準ズームと望遠ズームの2種類があれば大抵の紅葉は撮影できます。それ以外にマクロレンズや超広角レンズがあると更に撮影の幅が広がります。
標準ズームレンズ
標準ズームレンズは広角から中望遠程度の画角で、紅葉している風景を撮影したり、望遠側が105mmや120mm位あると葉をアップで撮影する事もでき、オールマイティに使える紅葉撮影では必須のレンズです。標準ズームレンズは広角側が24mm位で、望遠側が70mm~120mm位が一般的で、入門機のキットレンズでも紅葉撮影を十分楽しむことができます。
望遠ズームレンズ
望遠ズームレンズは紅葉の風景の一部を切り取ったり、紅葉の葉っぱをアップにして大きく撮影するのに適しています。紅葉撮影では標準ズームレンズの次に使用頻度が高いので、望遠ズームレンズもできればあった方が良いレンズです。望遠ズームレンズの中には最大撮影倍率が0.5倍のハーフマクロと呼ばれるレンズもあり、通常の望遠ズームに比べると葉っぱ等は撮影しやすいかもしれません。
マクロレンズ
紅葉撮影ではマクロレンズは無くても問題ありませんが、通常のレンズでは寄れない距離まで接近して、葉のディテールを撮影できるのが大きな魅力です。また、焦点距離が中望遠のマクロであれば、綺麗なボケを活かした撮影もできるので、ポートレートなどを撮影する場合にはあると便利です。
超広角レンズ
超広角レンズも紅葉撮影では必須ではありませんが、撮り方次第ではダイナミックな写真に仕上がるので持って行っても損は無いと思います。
紅葉を鮮やかにするPLフィルター
紅葉を撮影する際、必須とも言えるのがPL(偏光)フィルターです。余分な反射光があると全体的に白っぽくなるのですが、PLフィルターを使う事で乱反射を抑え、紅葉本来の色鮮やかな色、そして青空をより青く撮影する事ができます。
撮影後に現像ソフトを使えばある程度鮮やかにする事はできますが、PLフィルターを使用した方がより自然で鮮やかな紅葉写真に仕上がります。
ただし、PLフィルターの使用時に注意したいのが太陽の位置です。PLフィルターは順光(太陽を背にした)の時に効果が最大になり、逆光では全く効果が期待できません。PLフィルターを使うなら昼間の順光が最適です。
以下の例は、RAWファイルで撮影して、色調補正一切していない状態の比較です。結果は一目瞭然でPLフィルターを使うと白っぽい乱反射が抑えられ、紅葉の本来の鮮やかな色になりました。
紅葉撮影時のカメラ設定
絞り優先モード
紅葉を撮影する際のカメラ設定は『絞り優先モード』がおすすめです。絞り優先モードは絞りを自分で調整すれば、シャッタースピードはカメラが自動で調整してくれる便利なモードで、ボケを自由にコントロールできるのが特徴です。
例えば、中望遠レンズで紅葉した葉っぱにピントを合わせて背景をぼかしたい場合は、絞りを開放(F値を小さい数字)にします。また、紅葉している風景全体にピントを合わせてシャープにしたい場合は、逆に絞りを絞る(F値を大きい数字)といった使い方で、絞りを自由自在にコントロールして写真の印象を変化させます。
ホワイトバランス
RAWファイルで撮影する場合は、撮影後の現像ソフトでホワイトバランスを調整できるので、ホワイトバランスの設定はカメラ任せのオートでも問題ありません。
JPEGで撮影したり、その場で仕上がり具合を確認したい場合は、紅葉に合わせたホワイトバランスに設定すると良いと思います。おすすめのホワイトバランス設定は『日陰』や『曇天』にすると紅葉の赤や黄色が強調されます。
紅葉の撮影テクニック
何となく紅葉の風景を撮影していても単調な写真を量産してしまいがちです。少し違った雰囲気の紅葉写真の撮影テクニックやアイデアをご紹介します。
紅葉をアップで撮る
紅葉で染まった葉をアップで撮る時のコツは次の3つです。
- 主役を見つける
- スッキリした背景
- 絞り開放で背景をぼかす
ダメな例は、中途半端な画角で主役がなくゴチャゴチャとした印象になっています。できれば、主役となりそうな綺麗に形の整った葉を3枚前後に絞り込み、思い切り被写体に寄り、背景がスッキリした角度を探します。絞りを開放にすることで、背景がボケ、よりスッキリして主役が際立つようになります。
強めの太陽光が当たっている葉っぱを背景に配置して、中望遠で絞り開放で撮影すると玉ボケが発生してキラキラ感のある紅葉写真になります。
望遠レンズで一部を切り取る
綺麗な紅葉を目の前にするとついつい風景全体を撮りたくなってしまいがちですが、あえて主題となるような物や特徴を見つけて、紅葉の一部を切り取る撮影テクニックもおすすめです。
以下の作例は、標高の違いによる紅葉の色の変化を400mmの望遠で切り取りました。
超広角レンズで真上を撮る
紅葉している林などでは、カメラを真上に向けて撮ると一味違った写真が撮れます。この時、広角レンズよりも超広角レンズや魚眼レンズを使用するとより奥行き感が強調されてダイナミックな仕上がりになります。また、青空だと紅葉の赤や黄色とのコントラストがより一層美しくなります。
注意点として、真上を撮影する際は、明暗差が大きくなり白飛びし易くなるので、画角に太陽が入らない時間帯がおすすめです。どうしても画角に太陽が入る場合は、木や枝などに太陽が隠れるように角度をずらしたりすると白飛びが防げます。
地面すれすれで撮る
カメラの設定を絞り開放(絞りの数値を小さく)にして、地面すれすれのローポジションから撮影するテクニックです。いつもとは全然違った目線から見る風景が新鮮で、前ボケにより落ち葉が強調された作品に仕上がります。
紅葉撮影に最適な時間帯と太陽光
紅葉の美しさを引き立てるためには、時間帯と太陽の位置による光の特徴を意識する必要があります。
朝
紅葉撮影で一番おすすめなのが朝の時間帯です。特に早朝の日の出前後は、朝焼けや朝靄、霧や雲海など様々な要素と紅葉を絡めた絶景写真が撮れる絶好のチャンスとなります。また、日の出直後の太陽の低い時間帯は、柔らかいサイド光になるので写真に立体感が出しやすくなります。
昼間
昼間は太陽が高い位置にあり、立体感が出ない光なので、単調な写真になりがちですが、鮮やかな青空と紅葉を撮るなら昼間が最適です。秋晴れで澄み渡った青空の場合は、順光でPLフィルターを使用すると、より青空が鮮明になり、紅葉の赤や黄色が濃くなり、綺麗なコントラストが期待できます。
夕方
紅葉の時期の夕方は、太陽の傾く時間帯が早くなり、特に山間部では早い時間から日陰になる場所も多くなるので注意が必要です。日陰になると紅葉が綺麗に発色しなくなるので、できるだけ太陽の位置を把握して夕方でも光が当たる撮影スポットを見つけておく事がコツです。
夕方は太陽の光が横から入ってくるサイド光になり、影と光のコントラストが効いた紅葉写真が撮れます。
まとめ
一眼カメラを使って紅葉撮影を楽しむためには、基本的なカメラの使い方はもちろんですが、撮影する時間帯による太陽光の違いや特徴などを把握しておく事が重要です。また、レンズの特徴を活かした撮り方も取り入れると、より作品の幅が広がって楽しくなります。
紅葉は様々な場所で見る事ができ比較的長い期間楽しめるので、美しい秋色を撮影してみてはいかがでしょうか?