風景や星景のタイムラプスはカメラを三脚などに固定して撮影しますが、カメラを動かしながら撮影するモーションタイムラプスにすることで躍動感ある動画に仕上げることができます。ただ、モーションタイムラプスを撮影するには電動スライダーなどの機材が必要になる為、コストや撮影設定など手間がかかってしまいます。
しかし、Photoshopの基本的な機能だけでタイムラプス動画にカメラをパンやズームさせたような効果を簡単に加えることができます。Premiere Proのような高機能な動画編集ソフトは不要です。
今回は、Photoshopを使って定点撮影したタイムラプス動画にパンやズーム効果を疑似的に加える方法をご紹介します。
Photoshopで動画をパンやズームさせる手順
Photoshopの基本的な動画やアニメーションの編集機能の『パン&ズーム』を使うことで、タイムラプス動画をモーションタイムラプスのような動きを簡単に加えることができます。今回はタイムラプス動画で説明しますが、写真や画像も同様にパンやズームさせることができます。
Photoshop上で編集するパンといっても、中心を回転するのではなく、カメラを横にスライドさせたような効果なので自然な仕上がりになり、また、ズームも撮影時に機材で行うには非常に難易度が高いのですが、Photoshop上で行うと誰でも簡単にできます。
元となる動画の準備
Photoshopを使って疑似的に動画をパンやズームさせたい場合は、元となる動画の解像度は書き出すサイズよりも大きいものが必要になります。解像度が足りないとジャギーが目立ち輪郭がギザギザになってしまいます。
例えば、4Kの動画に仕上げたい場合は3840×2160よりも大きいサイズ、フルHDに仕上げたい場合は1920×1080よりも大きいサイズになります。
インターバル撮影した写真からタイムラプス動画にする場合、2400万画素のカメラなら解像度が6000×4000程あり、6K動画にすることが可能なので問題ないかと思います。
Photoshopで動画を読み込む
タイムラプス動画をPhotoshopで読み込みます。そうすると画面下部にタイムラインウィンドウが開くかと思います。もし、タイムラインが表示されていない場合は、上部メニュー > ウィンドウ > タイムライン からウィンドウを開いておきます。
仕上がりの動画サイズを指定
上部メニュー > イメージ > カンバスサイズ からカンバスサイズを変更します。
【変更後のファイルサイズ】に、仕上がりの動画サイズを入力します。今回のサンプルではフルHDサイズの1920×1080 pixelに設定します。
『新しいカンバスサイズが現在のカンバスサイズより小さくなるため、画像の一部が切り取られます。』とアラート画面が表示されますが、問題ないので【続行】をクリックします。
そうすると元のサイズのままで、指定したカンバスサイズでトリミングされた状態で表示されます。
動画レイヤーをスマートオブジェクトに変換
動画レイヤーのサイズなどを変更するには、スマートオブジェクトに変換する必要があるので、画面右のレイヤーウィンドウの動画レイヤー上で右クリックし、【スマートオブジェクトに変換】を選択します。
動画レイヤーのモーション設定
タイムラインウィンドウにある、動画レイヤーの上で右クリックすると【モーション】設定画面が開くので、プルダウンメニューから、【パン&ズーム】、【パン】、【ズーム】を選択して効果を加えていきます。
パン
わかりやすいように、まずはパンから説明します。パンはレイヤーを上下左右360度の方向にスライドする効果を設定します。
設定方法は2種類あり、①数字を入力し角度で指定するか、②円の部分にカーソルを合わせスライドさせたい方向に動かすのどちらかです。②のほうが直感的で分かりやすいです。円の中心から線が伸びてる方向にレイヤーが動くようになるので、被写体が動く方向と考えればOKです。
- 0度に設定:円の中心から線が右へ伸びているので、レイヤーが右へ、被写体は右へ移動
- 90度に設定:円の中心から線が上へ伸びているので、レイヤーが上へ、被写体は上へ移動
- 180度に設定:円の中心から線が左へ伸びているので、レイヤーが左へ、被写体は左へ移動
- -90度に設定:円の中心から線が下へ伸びているので、レイヤーが下へ、被写体は下へ移動
ズーム
ズームは、レイヤーの拡大縮小効果の設定をします。
【ズームイン】が徐々に拡大する効果。
【ズームアウト】が徐々に縮小する効果。
【基準位置】は、始点をどの位置にするかの設定で、基本的には中央でOKです。
パン&ズーム
【パン&ズーム】は、スライドと拡大縮小を組み合わせた効果を設定できます。
パンとズームの組み合わせは、数値を入力しても、どういった動きをするのか想像しにくいので、後から微調整するのが良いかと思います。
動作確認
パンやズームを設定したら、動画に書き出す前に動作確認をします。
大雑把に確認する場合は、タイムライン上にある【現在の時間インジケーター】を左右にドラッグします。
実際の動きで確認したい場合は、【再生ボタン】をクリックします。パソコンのスペックが低いと、滑らかに動くまで時間がかかります。
微調整
パンやズームを微調整したい場合は、動画の最初と最後にあるキーフレームで、動画レイヤーの自由変形で大きさや位置の変更を行います。実は、パンやズームのモーション設定をすると自動的に動画の最初と最後にキーフレームが追加されるようになっています。
タイムライン上のレイヤーの【>】をクリックすると、キーフレームが表示されます。【変形】の行の先頭にある【左右の三角マーク】をクリックすると、始点と終点のキーフレームへ移動できます。
それぞれのキーフレーム上に移動したら、上部メニュー > 編集 > 自由変形 でボックスが現れるので、動画レイヤーを自由に拡大縮小、位置の移動を行うことができます。
動画への書き出して完成!
微調整が終わったら、上部メニュー > ファイル > 書き出し > ビデオをレンダリング から動画へ書き出して完成です。
Photoshopのパンやズーム効果の動画サンプル
今回解説で使った動画のパン、ズーム効果のサンプル動画です。
ニュージーランドのオークランドで撮影したタイムラプス動画です。
まとめ
Photoshopを使ってひと手間加えるだけで、平凡なタイムラプス動画が躍動感あるモーションタイムラプス動画へと早変わりします。
電動スライダーでなければ撮影できないようなアングルや構造もあるかと思いますが、機材がかさばり場所によっては撮影が困難な場合もあるので、そんな時は、割り切ってPhotoshopの編集を前提とした撮影でもよいかと思います。
Photoshopなら簡単な編集だけで過去に撮影したタイムラプス動画を蘇らせることもできるので、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?