PhotoshopのCamera RAWで画像の解像度を縦横それぞれを2倍に拡大できるスーパー解像度と言う機能が追加されました。通常、画像を拡大するとぼんやりとした感じになり画質が劣化してしまうのですが、Photoshopのスーパー解像度は画質を保ちつつ拡大できるという驚きの機能です。
今回は、Photoshopのスーパー解像度を使った画像の拡大方法を解説すると共に、実例を比較したいと思います。
Photoshopのスーパー解像度とは
PhotoshopのCamera Rawに追加されたスーパー解像度とは、RAW、JPEG、TIFF、PNG画像の画質を保ったまま解像度の縦横それぞれを2倍、面積で4倍に拡大できる機能です。長年、高画質のまま画像を拡大する技術は不可能に近いとされていたのですが、Adobe Senseiという人工知能のAIに何百万枚もの写真を学習させ、スーパー解像度の画像拡大を実現しています。
現在はまだスーパー解像度はPhotoshopのみの機能ですが、近日中にLightroomとLightroom Classicにも追加されるとのことで非常に楽しみです。
2021年6月8日にLightroomとLightroom Classicにもスーパー解像度が追加されました。使い方はPhotoshopとほぼ同様です。
スーパー解像度の使い方
Photoshopのスーパー解像度は、RAW、JPEG、TIFF形式の画像に適用できます。また、適用可能な画像は、長辺が65000ピクセルまたは総画素数500メガピクセルまでの制限があります。
RAWファイルにスーパー解像度を適用する方法
RAWファイルをPhotoshopで開く
スーパー解像度を適用したいRAWファイル画像をPhotoshopで開きます。RAWファイルであれば自動的にPhotoshop経由でCamera Rawが起動するかと思います。
Camera Rawで『強化』を選択
Camera Rawが開いたら画像の上で右クリックをして、【強化】を選択します。
プレビューウィンドウが表示されるので、【スーパー解像度】にチェックを入れ【強化】をクリックします。スーパー解像度の処理にはGPUを使う為、GPUを搭載しているパソコンならサイズの大きい画像でも数秒で処理できますが、非力な内臓GPUの場合は数分かかる場合があります。
.dngファイルが生成されて完成
スーパー解像度の処理が終わると、元のRAWファイルと同じフォルダー内に『元ファイル名-強化.dng』の名前で、スーパー解像度のファイルが生成されたら完成です。あとは、生成されたDNGファイルをPhotoshop(Camera Raw)で開くだけです。
元画像の解像度が6016×4016ピクセルだったのが、スーパー解像度を適用したDNGファイルは2倍の12032×8032ピクセルになっているのが確認できます。
JPEGやTIFF画像にスーパー解像度を適用する方法
JPEGやTIFF、PNG画像にスーパー解像度を適用するには、Adobe BridgeからCamera Rawで画像を開く必要があります。
※Photoshopで開いたJPEGやTIFF画像をフィルターのCamera Rawから開いても適用できません。
Adobe Bridgeから写真を選択
Adobe Bridgeを起動したら、スーパー解像度を適用したいJPEG、もしくはTIFF画像を選択します。
Camera Rawで開く
画像上で右クリックして【Camera Rawで開く】を選択するとCamera Rawが起動するので、RAWファイルと同様の手順でJPEGやTIFF画像にスーパー解像度を適用するだけです。
スーパー解像度の実例と比較
2400万画素の画像に適用した例
最初に解像度が6000x4000程ある2400万画素の一眼カメラで撮影した写真に、スーパー解像度を適用してみたのですが、拡大してもディテールがある程度残っているのが確認できました。
試しに同じ画像をPhotoshopの通常機能の再サンプルを【ディテールを保持2.0】にして、2倍に拡大して、スーパー解像度との画質の比較してみました。
上部メニュー > イメージ > 画像解像度
画像を拡大する際、デフォルトだと【再サンプル】の項目は自動になっていて、【バイキュービック法】が適用されるのですが、その他の選択肢の【ディテールを保持(拡大)】も同様に、少しぼんやりした仕上がりになるので、今回は【ディテールを保持2.0】でノイズの軽減は0%で試しています。
まず、文字の部分ですが、スーパー解像度の方が若干シャープでノイズ量が多いようですが、差はあまりないようです。
橋桁の細い部分はスーパー解像度の方がディテールや質感を確認できます。一方のディテールを保持2.0は、シャープさが欠けぼんやりとした印象です。
遠景の風景部分でも明らかな差があり、スーパー解像度の方が被写体のエッジがシャープなのが一目瞭然です。
水面の細かな波もスーパー解像度の方がシャープな仕上がりです。
スーパー解像度で拡大した写真の方がシャープ感がありディテールも残っていますが、その分若干ノイズ量が多いといった印象を受けました。
Adobe曰く、スーパー解像度の使い道としては、低解像度カメラで撮影した古い写真を大きなプリント用に拡大したり、望遠で撮影した写真をトリミングして使う場合に適しているとの事なので、元々大きい画像にスーパー解像度を適用しても、期待している程の結果にはならない場合があるかもしれません。
また、元の画像のピントが甘かったり、JPEGで圧縮されて画質が悪いと、そのまま拡大されるのでスーパー解像度の効果を十分に発揮できない原因となります。
低解像度画像に適用した例
次に900 x 600の画像をスーパー解像度と通常の再サンプルのディテールの保持2.0で、2倍のサイズ(1800 x 1200)に拡大したものを比較してみました。
まずは画像の左側を等倍サイズ(100%)にトリミングして比較。
次に画像の右側を等倍サイズ(100%)にトリミングして比較。両社の違いは僅かに確認できる程度で、あまり差がないように思えます。若干【スーパー解像度】の方が細部の再現性が高いように感じます。
さらに小さい450 x 300の画像を900 x 600に拡大して試してみたところ、両者ともに差がほとんどわからないレベルの結果となりました。
【ディテールを保持2.0】もAdobe SenseiのAIを使っているので、限りなく【スーパー解像度】に近い仕上がりになるようです。他の拡大方法だと明らかに劣化するので、小さい画像を拡大する場合は、【スーパー解像度】か【ディテールを保持2.0】がおすすめです。
スーパー解像度とディテールを保持2.0の違い
今回、解像度の違う画像で、【スーパー解像度】と【ディテールを保持2.0】を比較してみたのですが、ある程度大きいサイズだと明らかな差が出ていたのですが、画像が小さくなるにつれて両者の違いが分らない位の僅かな差となりました。また、大きいサイズの画像でも写真によってはそれほど差が出ない場合もあります。
【ディテールを保持2.0】もAdobe SenseiのAIを使っているので、将来的には【スーパー解像度】だけが採用されるのではないでしょうか?
まとめ
スーパー解像度で小さい画像を拡大して綺麗な画像に復元できるかと言うと、まだまだ実用レベルには程遠い印象なので、これから更に改善されるのを期待したいところです。
スーパー解像度の使い道としては、低解像度カメラで撮影した写真を印刷用に拡大したり、望遠で撮影した写真をトリミングして使ったり、何らかの理由で応急処置的に小さい画像を大きく使いたい場合などには、有効な手段かと思います。
2000万画素あればA3サイズで綺麗に印刷できる解像度があり、アマチュアカメラマンにとっては十分かと思います。スーパー解像度を使って大きく拡大し、ポスターサイズで大判印刷するといった機会はほとんどない事を考えるとそれほど実用的ではないように感じました。