星景写真を現像する際に星空と風景部分を別々に分けて補正する機会が良くあると思いますが、Lightroomだけでは詳細なマスク処理ができないので不自然な仕上がりになることがあります。しかし、Photoshopの高度なマスク機能を使えば、風景部分の草木の複雑な枝なども綺麗に切り抜くことができるようになります。
今回は、星景写真の風景部分をPhotoshopのマスク機能を使って切り抜く方法を詳しく解説します。一般的な風景写真などにも使える便利なテクニックです。
クイック選択ツールでマスクする方法
星空と景色部分のコントラストがある程度ハッキリしている場合は、クイック選択ツールを使うと簡単です。Adobeは人工知能のAI(Adobe Sensei)を利用してAdobe製品を日々進化させていて、Photoshopも例外ではなく、面倒な作業をAIが自動化してくれます。
クイック選択ツールは、選択したい部分を大まかにドラッグすると、Photohopが自動的に選択範囲を作成してくれる便利な機能です。切り抜きたいオブジェクトと背景とのコントラストがハッキリしていれば、樹木の枝や草などの細かいオブジェクトでもかなりの精度で自動選択することができます。
【クイック選択ツール】で風景部分を選択
編集する写真をPhotoshopで開き、画面左側の【クイック選択ツール】を選択します。
画面上部パネルのツールオプションで設定を変更します。
- 【直径】風景の複雑さに応じて、ブラシの大きさを変更
- 【硬さ】100%
- 【間隔】1から25%位に設定(※数値が少ないほど滑らかになる)
- 【エッジを強調】チェックを入れると、境目がシャープになる
設定したら、円のカーソルに切り替わるので、風景部分をクイック選択ツールで大雑把にドラッグすると、自動的に選択されます。
【選択とマスク】で微調整
大まかに風景が選択されたら、選択した状態で画面上部にある【選択とマスク】をクリックして微調整を行います。
境界線調整ブラシツールで微調整
【境界線調整ブラシツール】は境目を大雑把になぞると自動的に綺麗に選択してくれます。
拡大表示して、選択されていない箇所をなぞるだけで、自動的に綺麗に選択してくれます。ブラシの大きさは、大きすぎると余分な部分も選択される可能性があるので、小さめに設定するのがポイントです。
グローバル調整で最終仕上げ
【滑らかに】境界線の角ばり具合を滑らかにします。風景の場合はそのままでOKかと思います。
【ぼかし】選択した境界をぼかします。境界をハッキリしたい場合は、0のままでもOKです。もし、ハッキリしすぎて切り抜きが不自然になる場合は、0.2 〜 1px位の設定すると自然な仕上がりになります。
最後は出力してマスクの完成!
出力先の設定は、【新規レイヤー(レイヤーマスクあり)】を選択して、OKをクリックします。
レイヤーマスクありの新規レイヤーが自動で生成され、空と風景部分を切り抜くことが出来ました。
※再度マスクを編集したい場合は、画面右のレイヤー内のマスクレイヤーのサムネール上で右クリックして、【選択とマスク】を選択すると、編集画面が開きます。
アルファチャンネルでマスクする方法
Photoshopのクイック選択ツールでは上手く選択できない複雑な場合は、アルファチャンネルを使って手動でマスクする方法が便利です。
今回はあえて切り抜きが複雑な樹木の枝を含んだ星景写真をサンプルとして使います。景色は近景と遠景との差があるので、このサンプルでは近景だけを切り抜いてマスクしてみます。
一番明暗差のあるチャンネルを複製
画面右側のチャンネルパレットから、それぞれレッド、グリーン、ブルーに表示を切り替えて、一番明暗差のあるチャンネルを探します。星景写真の場合は、ブルーのチャンネルが明暗差があるかと思います。
明暗差のあるチャンネルがみつかったら、それを複製します。
レベル補正でコントラストを強める
複製したチャンネルは、そのままだと空と景色部分の境目があまりハッキリしていないので、レベル補正(Ctrl + L)でコントラストを強めます。
プレビューを見ながら、3つの小さい三角のツマミ(シャドウ、中間調、ハイライト)を左右に動かして、星空と景色部分のコントラストがある程度ハッキリするように調整します。※この時点では完全に白黒にする必要はありません。
覆い焼きツールで境界をハッキリさせる
レベル補正だけではコントラストが不十分なので、覆い焼きツールに切り替えてマスクする部分との境界をハッキリさせます。
覆い焼きツールのブラシサイズは、写真の複雑さに合わせて大きすぎないサイズにして、境目付近を3、4回なぞると、色の薄い部分が白くなります。ただし、なぞる回数が多すぎると、黒い部分も白っぽくなってしまうので注意が必要です。
できるだけ色の薄い部分(空側)を覆い焼きツールでなぞったほうが失敗が少なくなります。
再度、レベル補正でコントラストを強める
覆い焼きツールで一通り境目をなぞったら、再び、レベル補正(Ctrl + L)でコントラストを強めて境目をハッキリさせます。
不要な個所を塗りつぶす
拡大表示して、必要な個所はもう一度覆い焼きツールで境目を綺麗に仕上げます。
不要な空の部分はブラシツールで白く塗りつぶし、景色部分の白っぽい部分は黒で塗りつぶします。サンプルでは木の幹などは白っぽくなっているので、黒く塗りつぶしました。
チャンネルを選択範囲として読み込む
上部メニューの【選択範囲】から【選択範囲を読み込む】を選択します。
チャンネルは複製したチャンネルを選び、反転にチェックを入れ、OKをクリックすると黒い風景部分が選択された状態なります。チャンネルパネルからRGBを選択して、表示をチャンネルから写真に切り替えます。
【選択とマスク】で微調整
上部メニューの【選択範囲】の【選択とマスク】を選択し、微調整をします。
【選択とマスク】での調整方法は、『クイック選択ツールでマスクする方法』内の手順を参照してください。必要があれば、【境界線調整ブラシツール】などで細かな部分を修正して、グローバル調整でぼかし具合などを設定してください。
最後は出力してマスクの完成!
出力先の設定を【新規レイヤー(レイヤーマスクあり)】を選択し、OKをクリックして、マスクの完成です。
まとめ
今回ご紹介したPhotoshopのマスク処理をマスターして自由自在に切り抜くことができれば、星景写真の現像テクニックに幅が広がり仕上がりに差が出てくるかと思います。
Adobeの人工知能も日々進化していて、クイック選択ツールを使えば、かなりの精度で簡単に切り抜くことができます。また、単体の物体を切り取る場合は、【オブジェクト選択ツール】で大まかに囲めば、自動的に物体を認識して選択範囲を作成してくれます。
昔からPhotoshopを使っていると、昔ながらの方法で作業してしまいがちですが、実は新しい便利な機能を使うことで、かなりの時短になり効率よく作業を行うことができます。