超広角レンズは初心者にとって癖が強くて扱いが難しいと思われがちですが、レンズの特徴を理解すればパースの効いた印象的な写真を撮ることができ、写真の幅が広がります。また、遠近感を表現する透視図法を知っていると、超広角レンズでの構図の取り方が簡単になります。
今回は、超広角レンズの特徴とパースを活かした撮影方法をご紹介します。
写真のパースとは?
写真やカメラ用語で使われるパースとは、英語のパースペクティブ(Perspective)の略で、遠近感や遠近法というような意味になります。遠近法は、写真だけでなく、美術や建築、アニメ、CGなど、視覚表現をする様々な分野で広く使われています。
広角や超広角レンズは広範囲を写すことができるので、パース(遠近感)を強調させやすくなります。
ちなみに、パースの反対の意味の圧縮効果は、遠くにあるものが近くのものと重なり密集し遠近感が少なくなり圧縮されたように見えることです。
超広角レンズの特徴
広い範囲が写せる
超広角レンズの最大の特徴は、広い範囲を写せることです。撮影ポイントが制限されていて後方へ引きで撮影できないような狭い場所、例えば、狭い室内、落差のある滝、眼下に広がる大パノラマの絶景など、超広角レンズがあると非常に便利です。
ただし、超広角レンズは広い範囲を写せる反面、逆に余計なものが写り込みやすいというデメリットがあります。順光で撮影すると自分の影が写ったり、三脚の脚が写り込んだりすることもあります。
遠近感が強調される
広角レンズになればなるほど、近くの物は大きく写り、遠くの物は小さく写るという特徴があり、超広角レンズはパース(遠近感)を強調しやすく、奥行き感を表現しやすくなります。
パースによる歪みが大きい
また、超広角レンズの特徴としてレンズの中心から外れた四隅付近ではパースによる歪みが発生し、垂直のものが斜めになって写る傾向があります。その為、超広角レンズを使って人物を入れた構図で撮影する時は、できるだけ人物を中心付近に配置するのがポイントです。
遠近感を出す『透視図法』が重要!
遠近感を出す図法に一点透視図法、二点透視図法、三点透視図法があり、これらを理解していると写真撮影で非常に役立ち、構図を取るのが上達します。
文字だけだと難しく感じるかもしれませんが、透視図法は消失点が何個あるかの違いだけで、図で見るとわかりやすいかと思います。
一点透視
対象物を正面から見た状態で、奥行きの消失点が1つになっているのが一点透視と言います。横の線は水平、縦の線は垂直になっているのが特徴です。最も単純な透視図法で、奥行き感を表現する基本となります。
長い直線の道路や室内の廊下、電車、橋などを撮影する場合は、一点透視の構図にすることで奥行き感が出しやすくなります。
二点透視
一点透視の対象物を斜めから見た状態で、横への奥行きの消失点が2つになっているのが二点透視と言います。縦の線がすべて地平線に対して垂直なのが特徴です。
消失点が2つあることで建物などをより立体的でダイナミックに見せることができます。もちろん、消失点を画面内に収める必要はありません。
三点透視
三点透視図法は消失点が3つあり、横方向に加えて、縦方向を含むものがが三点透視です。縦方法の奥行感を表現するのが高さで、下からアオリで撮影すると消失点が上にでき、逆に俯瞰で撮影すると消失点が下にできます。
広角や超広角レンズを使って対象物を近くから撮影すると三点透視になりやすくなります。ローポジション&ローアングルやハイポジション&ハイアングルで撮影すると、よりパースが強調されます。
超広角レンズを使いこなすテクニック
被写体に近づいて撮影する
超広角レンズでよくある失敗として、メインとなる被写体が思った以上に小さく写ってしまい迫力の欠ける主題があいまいな写真になりがちです。
超広角レンズは、写せる範囲が広いので強調したい被写体に近づいて大きく写すことでパースの効いた印象的な写真を表現しやすくなります。近くに寄ることで被写体と背景との距離の差が生まれ、遠近感が強調されます。
超広角レンズを使う場合は、被写体との距離にもよりますが、一歩、二歩と近づくだけでも見た目が大きく変わるので、意識的に通常よりも近くから撮影するように心掛けると良いかもしれません。
また、風景写真では近景も入れることで、中景、遠景との差が生まれパースの効いた仕上がりになります。
大胆なカメラポジション&アングル
普段とは違うカメラポジションとアングルにする事で超広角レンズの特徴を活かすことができます。思いっきりカメラを低い位置にして見上げたアングルにすると距離の差が生まれパースが強調され、逆に、高い位置から見下ろすように撮影しても、同様にパースが強調され、超広角レンズならではの写真になります。
普段は自分の目の高さで撮影する事が多いかもしれませんが、超広角レンズにした時は、ちょっと目線を変えて、しゃがんでみると良いかもしれません。
三分割構図にこだわらない
パースに効いた写真にするには、三分割構図にこだわる必要はなく、逆に三分割構図に制限してしまうことで、超広角レンズの特徴を活かしきれず、強調したい部分が思ったよりも強調されなくなる場合もあります。
例えば、雲が特徴的で空が綺麗な場合は、大胆に空を広めにした構図の方がよりインパクトのある写真に仕上がります。強調したいものを大きく写すというのが超広角レンズを上手に使いこなすコツです。
透視図法の方向と消失点を意識する
透視図法の消失点に向かって収束する線(リーディングライン)は、無意識のうちに見る人の視線を誘導するので、構図を決める上で重要な要素になります。消失点付近に主題を配置することで、自然に主題へと視線が集まりやすくなります。
お手頃おすすめ超広角ズームレンズ
TAMRON SP 15-30mm f2.8 Di VC USD
手振れ補正機能付きの超広角ズームレンズで望遠側が30mmまであるので、使い勝手の良いレンズです。f2.8の明るさなので星景撮影のレンズとしても人気です。旧モデル(A012N)の中古はお手頃価格で、出回っている数も比較的多く見つけやすく、非常におすすめです。
TOKINA Opera 16-28mm F2.8
トキナーから2019年に発売された新モデルにもかかわらず、10万円以下で手に入る16-28mmの超広角ズームレンズです。広角側が16mmで少し物足りなさを感じますが、f2.8の明るいレンズなので背景をぼかしたり、星景撮影にも使えたり、初心者にもおすすめのレンズです。
超広角レンズは、特徴を理解していれば扱いにくいと言う事はなく、逆に通常のレンズでは写せない迫力のある写真にする事ができるので、確実に作品の幅が広がります。
標準、広角、望遠レンズが揃ったら、次は超広角レンズに挑戦してみてはいかがでしょうか?