星景撮影の新常識NPFルールをご存じですか?星景撮影する際に星が線状にならないようにNPFルールで露出時間を計算すると確実に星を点で撮影することが可能になります。
従来の500ルールは露出時間をレンズの焦点距離だけで大まかに算出していたので、星が若干線状になってしまう場合もあったのですが、NPFルールはセンサーサイズや絞り値などを含めた計算方法の為、より正確な露出時間を算出できるようになっています。
今回は、星景撮影で星を点として撮影する適正露出時間を算出できるNPFルールを詳しく解説します。
星を点として撮影するには?
そもそも星は動いていて、その速度は思ったよりも速いので、星を撮影する時に露出時間が長すぎると星が点ではなく、動いた分だけ線状になってしまいます。
理論上ではできるだけ露出時間を短くすれば星は点として撮影できますが、光が少ない状況では露出時間が短すぎると確実に露出アンダーになってしまうので、ギリギリ線状にならない露出時間に設定するのがポイントです。
星を点として撮影するには、露出時間以外ににも様々な要素が関係していて、中でも一番影響が大きいのが、レンズの焦点距離です。
焦点距離が短い広角レンズほど星が点になりやすく、逆に焦点距離が長くなる標準や中望遠レンズになるほど線状になりやすくなる傾向があります。この特徴を利用して露出時間を計算する方法が500ルールです。

しかし、レンズの焦点距離だけでなく、画素ピッチ(センサーサイズの大きさと画素数)、絞り値、撮影場所の緯度や方角なども密接に関係しています。これらを総合的に取り入れて露出時間を計算する方法がNPFルールなのです。
星空撮影のNPFルールとは?
NPFルールとは、星空撮影する時に星が点として撮影できる最大露出時間(シャッタースピード)を算出する方法の一つで、絞り値、カメラの画素ピッチ(センサーサイズと画素数で計算)、レンズの焦点距離、撮影する方角や位置等を考慮に入れて計算します。
- N = Aperture(絞り)
- P = Pixel Pitch(画素ピッチ)
- F = Focal Length(焦点距離)
NPFルールには、簡略(Simplified)と詳細(Accurate)バージョンの2種類があり、確実に星を点として撮影したい場合は、詳細バージョンで計算した露出時間に設定します。
NPFルールと500ルールの違い
レンズの焦点距離だけから計算する500ルールと比べると、NPFルールは、より厳密で確実に星が点で撮影できます。
計算要素 | |
---|---|
NPF(詳細) | 絞り、画素ピッチ、焦点距離、撮影場所の緯度、方角 |
NPF(簡略) | 絞り、画素ピッチ、焦点距離 |
500ルール | 焦点距離 |
NPFルールで露出時間を算出する方法
はっきり言うと、NPFルールの計算式はかなり複雑なので全く覚える必要はありません。おそらく数学が得意な人じゃないと理解できないので、計算式の説明は省略します。
NPFルールで適正露出時間を出すには、自動計算してくれるウェブサイトを利用するのがおすすめです。
the Astronomical Society’s website(フランス語)⇒ Google翻訳 – 日本語版
スマホのカメラマン向けアプリ『PhotoPills』でもNPFルールで露出時間を一発で表示してくれる機能があるので複雑な計算をする必要はありません。ダウンロード ⇒ Android版(Google Play)、Apple版(App Store)

NPFルールの計算時に必要な情報
- カメラの機種
※リストにない場合は、画素ピッチ、解像度(幅×高px) - レンズの焦点距離
- 絞り値
- 撮影する方角
- 写真の撮影位置(横/縦)
- 撮影場所の緯度
- 空の角度(高さ)
カメラを空に傾けた時の画面中心部の指し示す角度
今回は、カメラをニコンD750、レンズの焦点距離20mm、絞り値f2.8に設定して、NPFルールで算出してみました。
カメラのメーカーと機種をリストから選択すると、自動的にそのカメラの画素ピッチと解像度(幅×高px)が入力されるのですが、もし、リストにない場合は、画素ピッチと解像度(縦横の画素数)を自分で入力する必要があります。
計算結果の見方
画面の左側がNPFの詳細バージョン、右側がNPFの簡略バージョンの露出時間になります。

NPFルールの計算結果:詳細は6.6秒、簡略は13.9秒
詳細バージョン
NPFルールの詳細バージョンは画像を上下左右に3分割して、それぞれの最大露出時間が表示されます。星景撮影する際は、景色で空が隠れる部分などを考慮した上で、最も短い露出時間に設定すれば、星が確実に点として撮影できます。
NPFの詳細バージョンは撮影場所や方角も計算されるので、簡略バージョンと比べると露出時間に違いがでます。方角や角度を少し変えるだけでも露出時間にかなりの差が出てくる場合もあります。
北半球の場合、北を軸にして星が回転しているので、撮影する方角を真北にすると星の動きが少なくなるので最大露出時間が長くなり、逆に南にすると星の動きが大きくなるので露出時間が短くなるのが確認でき、方角によっても全然違うことがわかります。
簡略バージョン
NPFルールの簡略バージョンは、撮影場所や方角を省略して、絞り、画素ピッチ、焦点距離の3つの要素から最大露出時間が計算されます。
露出時間 – 長い | 画素ピッチが大きい、焦点距離が短い、絞り値が大きい |
---|---|
露出時間 – 短い | 画素ピッチが小さい、焦点距離が長い、絞り値が小さい |
実際のサンプル
ニコンD750(フルサイズ)、レンズの焦点距離20mm、絞り値f2.8、露出時間13秒、方角や緯度などもNPFルールに合わせて計算した露出時間が以下になります。
NPFルールの簡略バージョン:13.9秒
NPFルールの詳細バージョン:6.6秒
サンプルの写真は、NPFルールの簡易バージョンより少し短い13秒で撮影したものですが、拡大してみると、左上は星が少し線状になっています。確実に星を点にするには7秒位にしないと駄目なようです。

焦点距離20mm&露出時間13秒でも左上部は100%に拡大すると線状になっている
ただし、フルHD程度の大きさの表示であれば、星はほぼ点に見えて、線状になっている事がわからないレベルです。
NPFルール vs 500ルール、どっちが良い?
星を点として撮影するには、露出時間が短ければ短いほど良いのですが、カメラやレンズの性能には限界があるので、目的や用途に合わせて、ぎりぎりの設定にして、あとはどこまで妥協できるかが重要かと思います。
大きく印刷するならNPFルール
拡大しても星が点でなければならない場面というのは、大判プリントの時位なので、印刷以外の目的であれば、NPFルールのような短い露出時間にする必要はないかもしれません。
NPFルールの露出時間で撮影すると、確実に星が点として撮影できるのですが、露出時間がかなり短くなる分、露出アンダーにならないようにISO感度を上げる必要があります。その結果としてノイズ量が増えるといったデメリットもあります。ノイズ量を軽減するには、複数枚の撮影や現像時の作業工程が増えるので、NPFルールは初心者向けではないような気がします。
WEBだけなら500ルールまたは400ルール
500ルールの露出時間で撮影した場合、画像を100%に拡大すると部分的には少し星が線状になることがありますが、拡大表示しなければ、それほど気にならないレベルです。
WEB上だけの目的であれば、500ルールでも十分なのではないでしょうか。もう少し露出時間を短めにしたい場合は、400ルールにして計算すれば、若干の改善は期待できるかと思います。
まとめ
NPFルールの露出時間で撮影すれば、星は点になるのですが、現状のカメラやレンズ性能だと結構厳しいので、個人的な意見としては、NPFの簡略バージョンに近い数値で撮影すれば、500ルールよりは良い結果で撮影ができると思います。
星を点として撮影する他の手段としては、NPFルールを使わずに赤道儀を導入するのもアリかもしれません。