ND1000以上の高濃度フィルターを使うとシャッタスピードを数分程度に遅くする事が可能になり、普段とは違う幻想的な雰囲気の写真に仕上げる事ができます。今回は、ND1000以上の高濃度NDフィルターを使って長時間露光で風景写真を撮影する方法やコツ、必要な機材について作例と共に詳しく解説します。
長時間露光撮影とは
長時間露光撮影は、カメラのシャッターを長時間開いたままにして写真を撮影するテクニックの一つです。通常の撮影ではシャッタースピードは数分の1秒から数秒程度ですが、長時間露光撮影は数十秒から数分にわたってシャッターを開けたままにするのが特徴です。
長時間露光に必要な機材
NDフィルター
NDフィルターは光の量を減らす為のフィルターで、減光させることでシャッタースピードを遅くする事ができます。通常の撮影ではND8やND16位を使って滝や波の動きを表現したりしますが、日中の明るい時間に長時間露光する場合は高濃度のND1000以上が必要になります。
日中に数分間の長時間露光をするとなるとND1000だけでは足りないので、ND64を重ね付けすることが多く、その場合はND64000となるので、明るい場所でも数分程度の遅いシャッタースピードで長時間露光で撮ることが可能になります。
NDフィルター選びのポイント
高濃度NDフィルターは色被りの影響が出やすいので、できるだけ色被りが少ない製品を選ぶのがポイントです。メーカーによってフィルターの色被りに特徴があり、赤っぱい暖色系であったり、紫っぽい寒色系であったりと違いがあります。無名メーカーの安価な高濃度NDフィルターは、色被りが激しかったり、色ムラがあったりするので安物買いの銭失いにならないように注意して下さい。
フィルターを重ね付けする場合、色被りが混在してしまうと現像時の色補正が難しくなってしまうので、同じメーカーのNDを使うのが望ましいです。また、広角レンズでフィルターを重ね付けするとケラレが発生しやすくなるので、薄型を使用するか、もしくは角型フィルターを使用するのがおすすめです。
三脚
当たり前の事ですが長時間露光で撮影する場合、手持ちではブレてしまうので三脚が必須になります。カメラがしっかりと固定できればどんな三脚でも問題ありませんが、数分間のシャッタースピードでも耐えられる頑丈さは必要です。
レリーズ
30秒以上のシャッタースピードの場合はレリーズが必須になります。長時間露光撮影は、ある程度正確な時間を測る必要があるので、秒数が表示される液晶画面付きのレリーズが使い易いです。
長時間露光の撮影方法と手順
絞り優先モードに設定
いきなりマニュアルモードにしても適正露出が分かりにくいので、最初は絞り優先モードにしておくのがおすすめです。
構図を決めて、ピントを合わせる
高濃度NDフィルターを装着すると暗くてピント合わせができなくなるので、まずはNDフィルターは装着せずにいつも通りに構図を決めてピント合わせをします。三脚を使用するのでレンズの手振れ補正をOFFにして、誤補正が起きないようにします。
※明るい場所でND64位であれば、オートフォーカスでピント合わせすることも可能です。
SSを計算しマニュアルモードに切り替える
絞り優先モードで適正露出にしたら、NDフィルター装着前のシャッタースピードを確認します。そのシャッタースピードを元にして、NDフィルターを装着した場合のシャッタースピードを計算します。
NDフィルター装着時のシャッタースピードの計算方法は、以下になります。
2枚重ね付けする場合は、「ND番号×ND番号」のようにそれぞれを掛ければOKです。ND64とND1000を重ね付けするの場合は、64×1000=64000となります。
例えば、NDフィルター装着前のシャッタースピードが1/250秒で、ND64とND1000を重ね付けした場合のシャッタースピードを計算すると、1/250秒×64×1000=262秒(4分22秒)になります。
計算ができたら、マニュアルモードに切り替えてシャッタースピードをBULBに設定します。
ND装着時のSS計算はアプリが便利!
ND装着時のシャッタースピードの計算は暗算だと少し面倒なので、スマホアプリの「Exposure Calculator」がおすすめです。NDの2枚重ねの計算も対応していて、更にストップウォッチ機能付きで非常に便利です。
NDフィルターを装着
ピントや構図がズレないよう慎重にNDフィルターを装着します。特に円形フィルターの場合は、ピントリングやズームリングに触れる可能性があるので注意して下さい。場合によっては、ピントリングやズームリングをマスキングテープなどで固定しておくと安心です。
レリーズを使ってバルブ撮影
あとは、レリーズを使ってバルブ撮影すればOKです。液晶画面付きのレリーズであれば、秒数が表示されるので問題ありませんが、液晶画面がなく秒数が分からないレリーズの場合は、スマホアプリのストップウォッチで時間を見ながら撮影すると失敗を回避できます。
長時間露光撮影のコツ
静と動を意識する
長時間露光の醍醐味は、被写体がブレることで、肉眼では見ることのできない幻想的で非現実的な世界を表現することが可能な点です。せっかく長時間露光で撮影するのに、動きが無い被写体を選んでも意味が無くなってしまいます。長時間露光撮影では、動きのない主題に、動きのある被写体を組み合わせ、静と動を意識するのが重要なポイントとなります。特徴のあるオブジェクトや建築物などを主題に選ぶと良いと思います。
長時露光に向いている被写体
長時間露光の被写体としては、雲や霧、海や川など水辺がある風景写真は比較的身近で挑戦しやすいかと思います。その際、動きのない静の主題を入れると写真が引き締まります。
雲の形がイマイチでも、長時間露光だとフワーッと流れたように動きが出るので、あまり気にせず撮影できるメリットがあります。海のように波がある水面は波が消え霧がかかったような雰囲気になり、湖のように穏やかな水面は滑らかな仕上がりになります。
以下の作例は、比較的波が穏やかな海で長時間露光撮影したことで、波が消え幻想的な雰囲気になりました。
次の作例も海で撮影したものですが、波は高くはないですが比較的動きのある場所で、長時間露光により波が消えて霧っぽい感じになりました。雲も流れるような動きが出て、通常のシャッタースピードでは表現できないアーティスティックな写真に仕上がりました。
まとめ
通常のシャッタースピードだと平凡な風景写真でも、高濃度NDフィルターを使用して数分程度の長時間露光で撮影すると一味違ったプロっぽい雰囲気に仕上がったりするので、試してみてはいかがでしょうか。新たな発見があり作品の幅が広がるかと思います。