風景写真を撮りに行ったのに青空がない曇り空の場合、諦めてしまいがちですが、雲によってはLightroomなどの現像ソフトでドラマチックに仕上げることができます。曇り空の写真を通常通りの方法で現像するとメリハリがなくのっぺりとした平凡な雰囲気になってしまいますが、ポイントを押さえ雲を強調させることで激変させることも可能です。
今回は、曇り空での風景写真の撮影方法と雲を強調させドラマチックに仕上げるLightroomのRAW現像テクニックをご紹介します。
曇天時の風景写真の撮影方法
立体的な曇が狙い目
青空がない曇天でも雲に立体感がある場合は、現像時にドラマチックな見た目に仕上げることができます。曇が黒っぽかったり、白っぽかったり、色に違いがあると、奥行き感が生まれ立体的になり、雲に表情が生まれます。
しかし、あたり一面フラットな灰色の立体感のない無表情な雲は、現像ではどうすることもできませんので注意してください。のっぺりとした曇り空の時は、空を入れないように構図を工夫する必要があります。
曇天時のカメラ設定
曇天時のカメラの撮影モードは、通常の風景写真と同じように絞り優先でOKです。また、Lightroomで現像するので、記録形式は必ずRAWにすることが重要です。
露出はアンダー気味にする
曇りの日に普段通りに撮影すると雲が白とびしやすくなります。雲が白とびしてしまうと立体感がなくなりドラマチックに現像できなくなってしまうので、カメラの設定は露出を少しアンダー気味にして、雲のディテールが残るように暗めに撮影するのがポイントです。
- 露出補正:-0.3から-1.0程度に設定
- 測光モード:スポット測光で雲に合わせる
露出補正を-0.3から-1.0程度にして撮影して、ヒストグラムを確認して白とびしていないことを確認します。もしマイナス補正をしても白とびしている場合は、測光モードが標準設定の多分割測光になっている可能性があるので、スポット測光に変更し、露出を雲に合わせるようにします。
明暗差があり明るさを雲に合わせると景色部分が黒つぶれしてしまう場合は、ブラケット撮影してHDR合成をすることをおすすめします。
【曇り空】のLightroom現像方法
平凡な曇り空を印象的に現像するには、少し強過ぎるくらいのイメージで全体的に普段より強めに補正するのがコツです。曇り空の場合、強い太陽光がないので写真全体のコントラストが低くなりがちなので、現像時にコントラストを上げることでメリハリがつきます。
通常の風景写真の現像方法だと以下のサンプルのように、曇の変化が少なく平凡な印象の写真になりがちです。
基本補正:階調
Lightroomの基本補正の階調で、雲の立体感を出すのに重要なのが【ハイライト】、【シャドウ】、【白レベル】です。写真全体のハイライトの白っぽい部分のディテールを出すための現像設定になります。
- コントラスト:少しプラス
コントラストは最初の時点では、0でも大丈夫です。 - ハイライト:強めにマイナス
ハイライトは雲のディテールを出すために、強めにマイナス補正 - シャドウ:強めにプラス
景色部分を明るくしディテールを出すために、強めにプラス補正 - 白レベル:0~少しマイナス
白レベルは白っぽい雲のディテールを出すために、少しマイナス補正 - 黒レベル:0前後
黒レベルは景色部分の状況を見て多少の補正
基本補正:外観
雲を強調する為に最も重要なのが、【テクスチャ】、【明瞭度】、【かすみの除去】で、プラス側に普段よりも強めに補正します。特に【かすみの除去】を強めにすると雲の立体感が増します。
ただし、外観を強めに補正すると、ノイズも一緒に強調されるデメリットがあります。ノイズ量を見ながら補正の度合いを好みで調整すると良いかと思います。
- テクスチャ:プラスに0~30
テクスチャは、雲や景色の岩、草木、水面など細かい部分がより強調されるので、全体を見ながらプラス補正。雲を部分的に補正する場合は、この時点では0でもOK。 - 明瞭度:強めにプラス
明瞭度は、写真全体的の輪郭や雲の立体感を強調するために、強めにプラス補正。 - かすみの除去:プラスに10~30
かすみの除去は、空の霞を軽減させハッキリとさせるために、少しプラス補正。強すぎるとレタッチ感が出すぎるので注意が必要です。 - 自然な彩度と彩度:0~若干マイナス
彩度を若干マイナスにすると、ドラマチックで雲の重々しい雰囲気が強調されます。
段階フィルターで空だけ強調
景色部分の補正が強くなりすぎる場合は、段階フィルターを使って空の部分だけを少し強調させるのがおすすめです。
補正する項目は、ハイライト、白レベル、テクスチャ、明瞭度、かすみの除去で、雲の状態を見ながら微調整します。
また、段階フィルターの【カラー】の項目で、少し色を追加することで更にドラマチックさを足すことができます。今回の例では、オレンジを少し足しています。色が濃すぎると不自然になる場合があるので、注意が必要です。
カラーグレーディングで色を足す
カラーグレーディングで色を足して全体の雰囲気を変化させるとより一層ドラマチック感が増します。今回の例では、シャドウに赤、ハイライトにオレンジを少し足し、合成とバランスで微調整しています。
最終仕上がり
違いが分かるように若干強めの補正をしていますが、現像によってこれだけ違う雰囲気の写真に仕上がることが確認できるかと思います。
動画で見る
Lightroomを使った曇り空の風景写真のレタッチ方法を動画にしてYouTubeにアップしました。
まとめ
いまいちな天気で曇っていても立体的な雲の場合は、晴天で雲が全くない状況よりは、現像のし甲斐があります。曇り特有の寒々しく寂しい感じだったり、荒々しいワイルドな感じを、現像次第で大きく変化させることができるのも楽しみの一つかもしれません。
失敗写真だと思っていた曇りの写真でも現像することで良い写真に化ける場合もあるので、未現像のHDDに保存したままの写真を引っ張り出して、現像してみてはいかがでしょうか?
また、今後避けられない曇りの日の撮影に出くわしたら、諦めずに立体的な雲を見つけて撮影するようにしてみるのが良いかと思います。