星空を撮影するとレンズによってはどうしても四隅にコマ収差や非点収差が発生してしまい星が綺麗な点や円にならない場合があります。コマ収差対策には高性能なレンズを使うという方法もありますが、Photoshopのレタッチ処理なら安上がりで確実に除去できます。
今回は、Photoshopのスタンプツールを使った星空写真のコマ収差を簡単かつ綺麗に除去する方法をご紹介します。
星のコマ収差とは?
星のコマ収差とは、彗星のように一方に尾を引いてボケた像になり、円状にならず星が尖ったように写る現象で、その多くはレンズの構造上どうしても四隅周辺に発生してしまいます。星のコマ収差は、非点収差の複合型の場合が殆どです。
高性能で高価なレンズほどコマ収差が出にくいのですが、特に明るめのレンズを絞り開放で撮影するとコマ収差が発生しやすくなります。
絞ることである程度コマ収差を抑えることは出来ますが、星空撮影では絞りすぎると露出アンダーになってしまうので、撮影時に完全に除去することが困難になります。

星空撮影すると四隅に出る星が点や円にならず尖がった状態の『コマ収差』
Photoshopでコマ収差を除去する手順
星のコマ収差を除去する方法は、いたってアナログ的にPhotoshopのコピースタンプツールを使います。基本的には通常のコピースタンプツールでも出来ますが、星を円状に整えるのが難しい為、星を簡単に円にすることが出来るコマ収差除去用のカスタムブラシを自作します。
コマ収差除去用のカスタムブラシの作成
カスタムブラシ用の新規ファイル作成
ファイル > 新規
カスタムブラシ用に、新規でファイルを作成します。ファイルの大きさは 500x500ピクセルで、背景は透明にします。
縦横の250pxの位置にガイドを引き、中心が分かるようにします。

中心が分かるように縦横の真ん中にガイドを引く
シェイプツールで黒い円を描く
シェイプツールを使って中心に黒い正円を描きます。
楕円ツールを選択し、ガイドの中心にカーソルを合わせ、クリックした状態でShift+Altでドラッグすると正円になるので、適当な大きさにします。

シェイプツール(楕円ツール)を使って、中心に黒い円を描く
黒い円のエッジをぼかす
黒い円を描いたらエッジをぼかします。
フィルタ > ぼかし > ぼかし(ガウス)
スマートオブジェクトに変換し、ぼかしの半径は15px前後に設定します。

フィルタのガウスを使って、黒い円のエッジをぼかす
中心に白い円を描く
新規レイヤーを作り、中心に小さめの白い円を描きます。大きさは黒い円の1/3~1/2位の大きさにします。黒い部分がコピーされる範囲になるので、白い部分が大きすぎるとコマ収差が除去しにくくなるので、どちらかというと小さめのほうが使いやすいです。
白い円の大きさ違いを3種類くらい作って、ブラシ登録しておくと使い分けすることができます。

中心に黒い円の1/3程度の大きさの白い円を描く
カスタムブラシとして登録
レイヤーを統合して、カスタムブラシとして登録します。
編集 > ブラシを定義
ブラシ名は分かりやすいように任意の名前を入力し、OKをクリックします。
中心に穴が開いたドーナツ型のコマ収差用のオリジナルのブラシが完成しました!
※中心は白くなっていますが、ブラシ登録後は中心部分は透明になります。

中心に穴が開いたドーナツ型のカスタムブラシが完成
コピースタンプツールでコマ収差を除去するだけ!
あとは地道に、コマ収差の発生した星の部分に、中心に穴が開いたカスタムブラシを合わせ、コピースタンプツールで除去していくだけです。
コピースタンプツールを選択
修正したい画像を開き、【コピースタンプツール】を選択します。
ブラシの形を先ほど登録しておいたカスタムブラシに変更します。
ブラシの大きさを調整
ブラシの中心の円と星の大きさが同じになるようにブラシの直径を調整します。
あとは通常のコピースタンプツールと同じ
通常のコピースタンプツールと同様にできるだけ似たような色の部分からコピーします。通常のブラシは丸い部分がそのままコピーされますが、コマ収差用に作ったブラシは中心がくり貫かれた状態でコピーさます。
コピー元となる場所で【alt+クリック】し、コピー先の星の中心をブラシの中心が重なる部分でクリックします。
そうすると星の周りだけがコピーされ、コマ収差が綺麗に除去されます。

スタンプツールでコマ収差を除去したい星に合わせるだけ
隣接する星が近すぎてコマ収差用のブラシを使うと消えてしまう場合は、小さめの通常のブラシに切り替えて、手動で消すようにするのがおすすめです。
コマ収差除去をした結果
Photoshopのスタンプツールを使ってコマ収差を除去した画像が以下になります。等倍でトリミングしています。


動画で見る
YouTubeにPhotoshopを使用したコマ収差の除去レタッチ方法の動画をアップしました。
まとめ
コマ収差が出てしまった星空写真もPhotoshopのカスタムブラシ&コピースタンプツールを使ってレタッチすることで、綺麗な写真に仕上げることができます。少し地味な作業になってしまいますが、確実にコマ収差を除去できるので、最後のひと手間としておすすめします。
一度コマ収差除去用のカスタムブラシを登録すれば、再度作る必要もなく、いつでも使うことができて便利です。基本的なPhotoshopの使い方を知っていれば、それほど難しくないので是非挑戦してみると良いかと思います。