皆既月食を有名な建物やランドマークと一緒に撮影するには、月の方角や高度、被写体までの距離などを把握する必要があります。満月を構図に入れた風景写真は、行き当たりばったりで偶然撮影している訳ではなく、綿密に計算され撮影されています。皆既月食は数年に一度に訪れる貴重なチャンスなので失敗しないようにしっかりと撮影プランを立てておきたいものです。
皆既月食の情報をネットでかき集めて、Googleマップ上で撮影できそうな場所を探すという方法もアリですが、カメラマン向けのスマホアプリ『PhotoPills』を使えばアプリ内で全て完結出来ます。
今回はスマホアプリPhotoPillsを使って皆既月食の撮影プランを立てる方法を岐阜城と満月の例で解説します。
PhotoPillsの皆既月食の撮影プランの立て方
カメラマン向け総合スマホアプリ『PhotoPills』なら、皆既月食だけでなく、月や太陽、天の川などの位置が数値だけでなく、マップ上で視覚的に把握でき、撮影プランを立てるのに非常に役立ちます。マップを使っての撮影場所の選定はもちろんですが、撮影に応じたレンズの焦点距離や画角なども事前に調べることが可能です。
今回は、2021年5月26日の皆既月食+スーパームーンにランドマークの被写体を入れた構図での撮影プランの立て方をご紹介します。もちろん、他の撮影日や撮影場所に置き換えてもOKです。
料金:US$9.99(約1200円)
PhotoPillsのプランナーを開く
スマホアプリのPhotoPillsを起動したら、Pillsの『プランナー』をタップし、撮影プランを立てます。
皆既月食の日付を選択
画面右下のマップ設定から、日食をタップし、今回は例として2021年5月26日の皆既月食を選択します。
プランナーのメイン画面に戻ると、自動的に2021年5月26日の皆既月食の日時に設定されます。
大まかな撮影場所(赤ピン)を決める
画面下にある【読み込み】をタップし、撮影したいランドマークや地名を入力し検索します。検索機能を使わずに、赤ピンを直接マップ上で動かしても問題ありません。今回は、サンプルとして岐阜城を撮影場所として選びました。
場所を選択すると、自動的にマップ上に赤ピンが配置されます。この時点では大まかな場所でOKです。後の工程で、撮影場所の微調整をします。
被写体の場所(黒ピン)を決める
次に被写体(ランドマーク)がある場所に黒ピンを配置します。
画面上部のプランナーという文字の下を左右にスクロールすると、赤と黒のピンのアイコンがあるので、それをタップします。そうすると、マップ上に黒ピンが追加されます。
マップを拡大して、黒ピンをドラッグして被写体の位置に移動させます。
例では、岐阜城の天守閣の真ん中に黒ピンを配置しました。
月の方角に合わせて撮影場所(赤ピン)を調整
次に撮影場所(赤ピン)を月の方角に合わせて動かし調整します。
マップ上の細い水色の線が設定した日時に赤ピンから見える月の方角で、白い点線が赤ピンと黒ピンを繋ぐ線になります。月の方角と白い点線が重なるように赤ピンを微調整します。
この機能は、赤ピンと黒ピンとの距離、方位角、高度差、更には黒ピンからの月の高さと月の大きさも表示されるようになっています。また、画面下のタイムライン(時刻)の部分を左右にスクロールすると時刻の変更ができ、マップ上の月の方角、上部に表示された月の高さの数値がリアルタイムに変化します。
サンプルとして選択した岐阜城の場合、標高329mの位置にあるのでその高さまで月が昇らないと見ることができませんが、PhotoPillsならそれぞれのピンの標高なども計算し、何時から見えるのかも全て教えてくれます。
試しに、タイムラインの部分を左にスクロールして時刻を早めると、月の見える方角の水色の線が点線に変わり、月の高さもマイナスの値になりました。水色の線が点線になっている時間帯は、撮影位置(赤ピン)からは月が見えないという意味で、視覚的に簡単に認識することができ非常に便利です。
撮影プランを立てる際、撮影位置(赤ピン)と時刻、月の高度などをよく見ながら、微調整すると良いと思います。
月の見かけの大きさの確認
マップ設定(画面右下)から、地図レイヤー > 月 > オプション
【月の大きさを表示】をONにします。
そうすると、月の方角を示す水色の線が、実際の月の大きさの幅で表示されるので、被写体に対しての月の大きさが把握できます。
もし、月の見かけの大きさを大きくしたい場合は、被写体と撮影位置の距離を遠くにすればするほど、月も大きく写ります。ただし、超望遠レンズも必要になるので、使用する機材を考慮しながら撮影場所を決めると良いと思います。
カメラやレンズで画角をシュミレーション
PhotoPillsには、カメラとレンズの焦点距離を設定すると画角をシュミレーションすることができる超便利な機能が備わっています。この機能を使うことで、ロケハンに行かなくても、どの焦点距離のレンズを用意すれば良いか把握することが可能です。
マップ設定(画面右下)から、地図ツール > 画角 を選択します。
そうすると、マップ上部にカメラやレンズの情報が表示されるので、それぞれのアイコンをタップして、撮影で使用するカメラとレンズの仕様に変更します。場合によっては、カメラの縦位置・横位置なども変更すると良いと思います。
サンプルでは、ニコンのフルサイズ機D750に焦点距離が600mmの望遠レンズに設定してみました。マップ上に表示された2本の白線内が撮影範囲(横の画角)となります。カメラの縦位置・横位置やレンズの焦点距離を変えると、マップ上の撮影範囲も変化するので、色々とシュミレーションして最適な画角を見つけるのが良いと思います。
また、各アイコンの一番右の3本線をタップすると、画角に収まる撮影可能な範囲が縦横それぞれメートル表示され、詳細も確認できます。被写体の実際の大きさが分かれば、必然的に画角に対してどのように収まるかというのも事前に把握することが可能です。
サンプルの場合、600mmのレンズを使い約1.2km先の被写体(岐阜城)を撮影すると、横72.92m、高さ48.75mの大きさで写せるということになります。月の見かけの大きさが11.9mなので、あとは岐阜城の天守閣の大きさが分かれば、画角にどの様に写るのか大まかに把握できるようになります。
当日の撮影現場ではAR機能が便利!
PhotoPillsの『AR』機能は、撮影する方角にスマホをかざすだけで、月の軌道が確認できます。撮影当日、現場に到着したら、PhotoPillsの『AR』機能を使って、撮影位置を微調整するとより確実な撮影ができます。
人気の撮影スポットの場合は、あらかじめ別の日にロケハンで撮影位置を確認しておき、当日は早めに場所取りをしておいた方が良いかもしれません。
岐阜城&皆既月食の撮影プラン例
今回サンプルとしてPhotoPillsを使って導き出した2021年5月26日の『岐阜城と皆既月食&スーパームーン』の撮影プランをご紹介します。
超望遠で岐阜城と月を撮影
超望遠レンズを使って岐阜城と月を撮影するには、長良川公園付近から、20時10分から20時25分頃の間が良さそうです。岐阜城と月が重なっている時間帯は5分程度なので、構図内で月をどの位置に収めるかが重要になってきそうです。撮影場所の長良川公園は比較的広いようですが、低い位置からだと月が見え始めるのが遅くなるので、できるだけ高い撮影場所を選んだほうが良いかと思います。
- 撮影場所:長良川公園付近
- 時間:20時10分頃から25分
- レンズ:600mm前後
※長良川公園付近からだと金華山の山頂付近の木が岐阜城に若干被る可能性があります。
タイムラプスで岐阜城と皆既月食を撮影
皆既月食が始まるのが20時9分頃ですが、長良川公園付近から岐阜城に月が見え始めるのが20時10分頃なので、タイムラプスで皆既月食の最初から写すことはできないようです。タイムラプスで撮影する場合は、レンズの焦点距離を300mm前後に抑えて、やや広めの画角にして岐阜城と月が写るようにするのが良いかと思います。
- 撮影場所:長良川公園付近
- 時間:20時10分頃から20時30分頃
- レンズ:300mm前後
※長良川公園付近からだと金華山の山頂付近の木が岐阜城に若干被る可能性があります。
皆既月食や月の撮影方法は別記事にまとめていますので参考にしてみてください。
まとめ
PhotoPillsのプランナー機能を使えば、ロケハンに行かなくてもある程度の撮影プランを立てることが可能です。今回は、皆既月食を例にした使い方をご紹介しましたが、同様の方法で朝日や夕日、月、太陽などの風景写真だけでなく、天の川の位置も確認できるので星景写真の撮影プランを立てることもできます。
PhotoPillsは高機能で非常に便利なカメラマン必須のスマホアプリです。自分だけの撮影スポットの開拓にPhotoPillsを是非活用してみてはいかがでしょうか?