光害のある夜景と天の川を同時に撮影しようとすると明暗差が激しいので夜景部分が白飛びしやすく、上手く撮影できない場合がほとんどですが、角型ハーフNDフィルターを使用すれば、夜景×天の川の星景撮影で問題となる明暗差を解決することができます。
今回は、光害のある場所で角型フィルターを使って夜景と天の川を同時に撮影する方法をを実例と共に詳しく解説します。
夜景×天の川の星景撮影は難しい!
夜景×天の川の星景撮影で一番難しいのは明暗差です。光害のある夜景と一緒に天の川を通常通りに星景撮影すると、夜景部分は明るくなりすぎて白飛びしやすくなります。完全に白飛びしてしまった箇所はPhotoshopを使っても元に戻すことはできないので非常に厄介です。逆に夜景の白飛びを抑えようとしてISO感度を下げたり、シャッタースピードを短くし過ぎると天の川が薄っすらとしか写らなくなってしまいます。
また、街灯りの光害の影響を受けた星空の一部が黄色っぽく色被りしてしまい現像時に苦労することがよくあります。
以上の理由から、夜景と一緒に写す天の川の星景写真は、光のコントロールが難しい難易度の高い撮影になります。
夜景×天の川の星景撮影には角型フィルターが有効
夜景×天の川の星景撮影での明暗差と光害の問題を解決するには、夜景部分の光量を減らし、光害をカットすれば良いのですが、それを実現するには角型フィルターシステムが有効になります。
角型ハーフNDフィルターで夜景の光量を抑える
まず、明るすぎる夜景部分だけの光量を抑えるには、減光したい位置を自由に調整できる角型フィルターのハーフNDが有効です。角型ハーフNDフィルターにはいくつか種類がありますが、夜景を含んだ星景撮影には、GNDと言われているグラデーションNDやリバースGNDが最適です。
GNDは中心付近から徐々に濃くなるフィルターで、境目の違いにより「ソフト」、「ミディアム」、「ハード」の3種類があります。リバースGNDはその逆で、中心付近が一番濃く、端に向けて徐々に薄くなるフィルターです。
夜景を含んだ星景撮影は撮影場所によって夜景の位置や光量が違ってくるので、一概にどれが良いとは言いにくいのですが、ソフトGNDかリバースGNDで、NDの濃度はND8(3段分)かND16(4段分)位が無難かと思います。
ソフトGND
境目のグラデーションが緩やかなソフトGNDであれば、夜景も近景もある程度明るい場合や夜景の範囲が広い場合に適しています。撮影場所によってはミディアムGNDのほうが使いやすい場合もあるので、悩ましい選択になりますが、境目のグラデーションが急だと違和感が出やすくなるので、様々なシチュエーションで使いやすいソフトGNDが無難かと思います。
リバースGND
リバースGNDは、夜景の範囲が比較的狭く、近景に光害が少ない場合に適しています。リバースGNDの境目は、「ソフト」、「ミディアム」、「ハード」などの区別はあまりなくメーカーによって違いがあるので、境目が緩やかなソフトもしくはミディアムっぽい方が使いやすいかと思います。星景以外にも日の出・日の入り時の風景撮影でもリバースGNDは有効です。
センターGND
夜景の範囲が狭い場合は、中心付近のみ減光するセンターGNDも有効かもしれません。空を広くして地上部を少なく撮影する星景ではセンターGNDは結構使えそうな気がします。予算に余裕があれば買い揃えておいて損はないと思います。
光害カットフィルターで色被り軽減
光害カットフィルターは必須ではありませんが、街灯りによる水銀灯やナトリウム灯の黄色やオレンジっぽい色被りを軽減させることができるので、現像時の作業が楽になります。
各メーカーの角型フィルターシステムにもよりますが、光害カットフィルターは円形のドロップインや正方形の角型タイプになります。組み合わせるフィルターによって、円形か角型を決めると良いと思います。
星を滲ませるならソフトフィルター
星を滲ませて強調したい場合はソフトフィルターを使用します。角型フィルターシステムは、フィルターを重ね付けしてもケラレにくいというメリットがあるので、安心して使用できます。
ソフトフィルターは全体を滲ませるタイプだと夜景部分も滲むので、夜空のみカバーできる角型のハーフソフトフィルターがおすすめです。
角型ハーフNDを使用した夜景×天の川の実例
使用機材:H&Y REVORING Swiftシステム
今回はH&Y Filters Japan様よりお借りしたREVORING SWIFTシステムを使用して、夜景×天の川の星景を撮影しました。
- 角型フィルター:リバースGDN16 100x150mm
- 角型フィルター:Nightフィルター 100x100mm(光害カットフィルター)
- 円形ドロップイン:White Promist 1/4 (ソフトフィルター)
H&Y REVORING Swiftシステムはマグネット式なので脱着が簡単で暗闇の星景撮影でも非常に快適です。REVORING Swiftシステムの詳細レビューは以下の記事をご覧ください。

角型フィルターを使用した夜景×天の川の実例
RAWで撮影し、撮影後にホワイトバランスの色温度と色被り補正は全て同じ数値にして、それ以外は手を加えていない状態で比較します。撮影した日は湿度が高く大気に若干の霞があり完璧な状態ではありませんでした。
フィルターなし
フィルターなしで通常の星景撮影をした場合、はやり夜景の街灯りの部分が明るくなりすぎて、白飛びしてしまいました。肉眼だとあまり明るさを感じない夜景でも、撮影すると予想以上に明るくなってしまいます。
フィルターあり:リバースGND
角型リバースGNDフィルターを付けた場合、空の明るさは同じですが、夜景部分の光量が落ちて、白飛びが抑えられています。
星空と夜景の境にGNDの位置を合わせるのが結構難しいので、何度か撮って仕上がりを確認して微調整する必要があります。一般的な角型フィルターは位置合わせするには結構力を入れないと上下に動かないのですが、H&Yの角型フィルターはマグネット式なので比較的軽い力でも動かせ微調整が非常に楽でした。
また、ソニー機であれば、ブライトモニタリング機能を使うと星景のような暗い場所でも液晶画面を見ながら構図確認ができるので、GNDの位置調整もしやすくなるかと思います。

リバースGND
フィルターあり:リバースGND、光害カット
次に角型リバースGNDと光害カットフィルターを付けた場合。黄色やオレンジっぽい光害が軽減され、空全体が青っぽくなりました。光害カットフィルターを使用すると1/3段ほど光量が落ちるので、暗くなりすぎる場合は調整した方が良いかもしれません。

リバースGND、光害カット
フィルターあり:リバースGND、光害カット、ソフトフィルター
最後は、角型リバースGND、光害カット、ドロップイン式の円形ソフトフィルター(White Promist 1/4 )の3つを付けた場合。今回使用したソフトフィルターは、円形で全体を滲ませるタイプなので、夜景部分も滲んでいます。好みによりますが、星空部分だけを滲ませるハーフタイプのソフトフィルターが良いかもしれません。

リバースGND、光害カット、ソフトフィルター
作例
撮影場所は同じですが、焦点距離を24mmにして近景の不要な暗い部分が入らない構図にした作例です。
リバースGNDで夜景部分を減光して、光害カットフィルターで街灯りの色被りを軽減しています。夜景の滲みが気になったので、ソフトフィルターは使っていません。
まとめ
明暗差の激しい夜景と天の川を同時に撮影するには、白飛びを抑える為に角型フィルターを使用して夜景の光量を減光する事が重要です。撮影場所によって夜景部分の光の強さや範囲が違うので、所有しているGNDフィルターで完全に対応できない場合もありますが、角型GNDフィルターで減光した方が間違いなく綺麗に撮影できます。
角型フィルターは高価なので気軽に導入するのは難しいかもしれませんが、その効果は絶大で、角型フィルター有り無しでは雲泥の差になるので、夜景×天の川の撮影をする場合は必須アイテムとなります。
角型フィルターは風景写真でも使えるので、まずは最低限必要なものを揃えて、後は徐々に買い足していくと言う方法でも良いのではないでしょうか?
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【H&Y REVORING SWIFT専用サイト】

【H&Yの公式ウェブサイト】