最近はSNSでも多くの写真コンテストが開催されWEBから気軽に応募できるのですが、場合によっては応募作品の著作権の帰属が主催者に変更され、自分の撮った写真なのに自由に使えなくなる可能性があるので注意が必要です。賞金や賞品に目がくらみ安易に写真を応募してしまうとトラブルの原因になるので、必ず応募規約に目を通し著作権が誰のものなのか確認する事が重要です。
今回は写真コンテストで注意すべき著作権の帰属に関して詳しく解説します。
写真コンテストの応募作品の著作権は誰のもの?
写真の著作権は撮影者に帰属するの原則
写真コンテストに応募した写真の著作権は著作権法上その写真を撮影した本人に帰属するのが原則です。大抵の写真コンテストは、入賞作品であっても著作権は撮影者に帰属したままで、応募規約で写真の使用許諾を得る文面が記載されています。
写真の使用許諾は許可を得た範囲内での使用は可能ですが、それ以外は著作権侵害となるので、どのような用途で使用されるのか出来るだけ詳細が記載されている必要があります。また、著作者人格権というものもあり、著作者の名前を表示するか否か、写真を改変(加工)は、著作者の許諾が必要になります。
著作権が主催者に帰属するとどうなる?
写真コンテストによっては、入賞した作品が主催者の帰属になったり、悪質な場合は入賞作品に限らず応募作品全てが主催者に帰属されたりするので注意が必要です。
著作権の帰属が写真コンテストの主催者に変更になった場合、著作権が譲渡されたという事なり撮影者本人であってもその写真を今後は一切使用する事ができなってしまいます。
著作者人格権は譲渡されない!
著作者は著作者人格権も有していて、著作者人格権は基本的には譲渡する事ができないので、写真が改変(加工)された際に著作者人格権の侵害を主張することができます。
ですので、写真コンテストの応募規約に「写真は主催者に帰属する」と記載があったとしても、応募規約や著作権譲渡契約書に「譲渡後は著作者人格権を行使しない」という旨が明記されていない限りは、主催者は写真を加工して使用はできないという事です。
完全に譲渡されるとどうなる?
著作権が譲渡され、著作者人格権も行使できなくなると、完全に他人の物になってしまい、撮影者本人であっても譲渡先の許可なく写真を使用する事が出来なくなってしまいます。他の写真コンテストに応募することはもちろん、SNSにアップする事も完全に禁止で、逆に著作権侵害で訴えられる可能性すらあります。自分の写真なのに何だか悲しいですね。
写真コンテストの応募規約は必ず目を通すべし!
写真コンテストで応募した自分の写真の著作権が意図せず譲渡されない為に、応募規約に必ず目を通す事が重要です!写真コンテストには必ず応募規約が記載されているので、その中から著作権に関する文言を見つけ出し、その内容を確認しましょう。
応募規約の注意すべき項目
著作権は誰の帰属なのか
まず一番重要な著作権は誰の帰属になるのか、応募規約に明確な記載があるかを確認します。「帰属」という言葉以外に、「譲渡」という言葉も代わりに使われる場合があります。
写真の使用許諾内容
著作権の帰属は撮影者のままであっても、写真コンテストの主催者は応募作品の使用承諾を得る為に、写真の使用許諾に関する記述があるのが一般的です。応募作品をどのように使用するのか確認する必要があります。応募規約が詳しく記載されていれば安心ですが、使用目的が曖昧な場合は後々トラブルの原因にもなるので応募を避けた方が良いかもしれません。
- 入賞作品のみ、それとも応募作品全てなのか
- 使用目的
- 使用範囲
- 使用期間
- 加工の有無
- 撮影者の名前の記載(クレジットの有無)
入賞作品のみ使用すると言うのが一般的ですが、中には応募作品全てが対象となる場合もあるので必ず確認する必要があります。
写真の使用目的や範囲は様々ですが、主催者が認めた第三者に対しても写真を提供する場合は、知らない場所で勝手に使われるリスクが高まるので要注意です。できれば主催者のみの使用が望ましいかと思います。
加工の有無に関しては、「写真を加工して使用する場合でも著作者人格権を行使できない」と言った内容が記載されている場合が多く、写真を自由にトリミングしたり、文字を追加したりする目的の記述です。
著作者人格権の記載はあるか?
応募規約に著作権の帰属が主催者に変更され、更に著作者人格権に関する記述ある場合は要注意です。
ただし、著作権の帰属が主催者に変わっても、著作者人格権に関する記述がない場合は、著作者人格権を主張することができるので、主催者は著作者の許可なしに写真を加工したり、クレジット抜きでの使用は不可という事になります。
推奨される応募規約
日本写真著作権協会(JPCA) では、フォトコンテストの主催者向けに「応募要項に関わる写真著作権の帰属について」のガイドラインをリリースしているので、今後フォトコンテストを開催しようとしている方は参考にして頂ければと思います。
要注意の写真コンテスト
応募作品が主催者に帰属する写真コンテストのほんの一例です。まだまだ要注意な写真コンテストがあるので十分注意して下さい。
刀剣ワールド「寺・神社写真コンテスト」
刀剣ワールドというウェブサイトが主催する「寺・神社写真コンテスト」の応募規約には、
- 応募者は、応募写真が第三者の権利を侵害しないことを保証し、著作者人格権を行使しないものとします。
- 応募作品の著作権は、応募と同時に応募者から弊社に移転します。
と記載されているので、作品を応募した瞬間から著作権は主催者に帰属し、著作者人格権の主張もできなくなるので、著作権を捨てたくない人は応募はしない方が良いでしょう。
そもそも寺社等の建築物にも著作権が発生する場合もあるので、かなりグレーな写真コンテストと言った印象です。この写真コンテストの意図が何なのかわかりませんが、写真を撮った人へのリスペクトが無く、悪意すら感じます。主催している会社はそれなりに大きな企業なのですが、少し残念です。
千葉県八千代市「花のInstagramフォトコンテスト」
千葉県八千代市が主催する「花のInstagramフォトコンテスト」の応募規約には、
- 市が応募者に対し、画像データの提供を依頼する入選作品などの著作権・使用権は市に帰属し、必要に応じて色調整・トリミングを行い、シティプロモーション・広報活動に使用する場合があります。使用する場合、個人への通知は行いません。また、本市が認めた目的の範囲であれば、他団体・企業等へも提供できるものとします。
と記載されているので、入賞作品は著作権の譲渡があり、場合によっては主催者以外の第三者にも写真を提供する可能性もあるようなので注意が必要です。また、著作者人格権に関する記述がありません。地方自治体が主催する写真コンテストですが、著作権に対する意識が低いように思われます。
まとめ
ウェブ上では様々な写真コンテストが開催されていて誰だも気軽に応募できるのですが、著作権の帰属を把握していないとトラブルの原因になるので注意が必要です。
写真コンテストに応募する側としては、必ず応募規約に目を通し、著作権の帰属が主催者に変更される場合は応募を避けた方が良いかと思います。また、著作権に関する記述が曖昧な場合は応募を避ける事が賢明です。
写真コンテストを主催する側としては、正しい著作権の知識を身に着けているのが当然のことであり、健全な写真コンテストを開催する必要があるかと思います。著作権に対する認識の甘さは企業にとっては命取りでイメージダウンに繋がりかねない危険性があります。