カメラ用語で度々耳にする圧縮効果の意味をご存知ですか?特に望遠レンズの性質を活かして撮影することで遠景との距離感が縮まり圧縮効果をより高めることができ、写真の表現に幅を出すことが出来るようになります。
今回は圧縮効果の仕組みを図や実際の写真を例にして広角レンズと望遠レンズでの違いや撮影方法を解説します。
圧縮効果とは?
圧縮効果とは、遠くにあるものが近くのものと重なり密集し遠近感が少なくなり圧縮されたように見える効果のことです。実際は遠くにあるはずの遠景が近景の被写体と重なる事によって距離が縮まって見える圧縮効果は、望遠レンズの性質を活かした撮影方法の一つです。
圧縮効果を使って、群衆、渋滞、植物などの密集感を増幅させたり、遠景と近景を上手く重ね合わせてトリック写真的な表現でも使われます。
望遠レンズの性質と圧縮効果の仕組み
焦点距離の長い望遠レンズは、皆さんもご存知の通り遠いものを大きく写せると言う性質があり、この望遠レンズの性質を上手く利用したのが圧縮効果の撮影方法です。遠くにある背景を大きく見せたい場合は、広角レンズよりは望遠レンズを使ったほうがより効果的になります。
逆に広角レンズは、近くの物が大きく写り、遠くの物が小さく写る『パース』または『パースペクティブ』(遠近感)と言われる性質があるので、圧縮効果を表現するには不向きになります。
圧縮効果の仕組みの図解
圧縮効果で重要なのは被写体との距離
メインとなる被写体とカメラとの距離があればあるほど圧縮効果が強まるというのが重要なポイントです。
以下の実例では、メインの被写体を同じ大きさに保ちながら、カメラと被写体との距離を変化させて撮影しています。写真を見ると分かるように、被写体からの距離が一番近い24mmで撮影した場合は遠景が小さく写り遠くに見えますが、離れれば離れるほど遠景と被写体との距離感がぐっと縮まり圧縮効果が強くなっているのが確認できます。
メインの被写体を同じ大きさに保つ為には、離れた分だけ望遠でズームする必要があるので、圧縮効果を出すには焦点距離が長い望遠レンズが良いというのはそう言った理由です。
圧縮効果は焦点距離では変化しない
同じ位置で、同じ被写体を広角、標準、望遠など色々な焦点距離で撮影した場合、被写体が同じ大きさになるようにトリミングすると焦点距離には関係なく、圧縮効果はすべて同じ結果になります。
圧縮効果は焦点距離では変化しないというのを実証する為に、広角24mmで撮影した写真をトリミングした場合と望遠120mmで撮影した写真を比較してみました。
カメラの位置は全く同じで焦点距離だけを変えて、中央部分をトリミングしていますが、フェンスの杭の間隔は全く同じで圧縮効果に差はありません。
圧縮効果はあくまでも被写体との距離で変化すると言うことです。
高画素カメラならトリミングで圧縮効果
圧縮効果はレンズの焦点距離に関係ないので、望遠レンズがない場合はトリミングして使うという方法もありです。その場合、トリミングしてもある程度の大きさが確保できる高画素一眼カメラの方が有利になります。
ただし、高画素のカメラであってもトリミングして使える限界があるので、やはり望遠レンズを使って自分の理想のサイズで撮影するのがベストではないでしょうか?
映像でも使われる圧縮効果ドリーズーム
圧縮効果は写真だけでなく映像でもドリーズームと言われる撮影方法で使われていて、被写体の大きさが変わらないようにしてズームインもしくはズームアウトすると背景の大きさだけ変わる不思議な効果を出すことができます。
ドリーズームは映画やドラマでもよく使われていて、映画で有名なのがヒッチコックの「めまい」やスピルバーグの「ジョーズ」です。
写真よりも映像のドリーズームを見たほうが圧縮効果の仕組みが簡単に理解できるかもしれません。
まとめ
望遠レンズの性質を活かした圧縮効果を使えば、アイデア次第でインパクトのある写真や肉眼では見ることのできない非現実的な写真に仕上げることができます。
また、ポートレート撮影では、被写体の背景をどのように写すかで印象が大きく変わってくるので、圧縮効果を上手く使い分けて、更に写真の表現の幅が広げてみてはいかがでしょうか?