適正露出で星景撮影できていますか? 星景撮影の場合、いつも同じ設定で撮るのではなく、場所や環境によって明るさは様々なので臨機応変に適正露出になるように設定する必要があります。撮影時にはカメラ本体の小さな液晶モニターでは細部が確認できないので、ヒストグラムをチェックして露出を見極めることが重要です。
今回は、星景撮影での適正露出をヒストグラムで確認する方法をご紹介します。
星景写真のヒストグラムの見方
星景写真では、景色と星空部分をヒストグラムから見極められれば、適正露出で撮影することができるようになります。
典型的な星景写真のヒストグラム
星景写真のヒストグラムで典型的なのが、山が2つになっているパターンです。星空に比べると景色部分が暗くなり、明るさに差が出るために山が2つになり、左の山が『景色』で、右の山が『星空』になります。
明暗差が激しい程、ヒストグラムの2つの山の間隔が離れ、露出のコントロールが難しくなり、白とびや黒つぶれと言った原因となります。
景色がある程度明るい星景写真のヒストグラム
景色部分もある程度の明るさがあると、星空との明るさの差が少なくなりヒストグラムの山の間隔が穏やかになります。
景色が明るい星景写真のヒストグラム
景色と星空の明るさの差が少ない星景写真の場合、ヒストグラムの山が一つに近い形になります。リフレクション、海や湖などを景色に入れた場合は、山が一つのヒストグラムになるので、比較的露出のコントロールが簡単と言えます。
星景撮影でおすすめ露出設定
星景撮影と一言で言っても、撮影場所によって周囲の明るさが違うので、臨機応変にカメラの設定を変えて適正露出で撮影する必要があります。写真の露出の状態を把握するには、カメラの液晶モニターでヒストグラムを確認します。
左寄りの露出(ETTL)
ETTL(Exposed To The Left)、やや左寄りのヒストグラムは、少し露出アンダー気味ですが、黒つぶれしていなければ星景写真では、最もおすすめの露出設定です。
天体写真(星だけ撮影)では、この山が左寄り(ETTL)のヒストグラムが適正とい言われていて、星が白とびしにくく、星の本来の色を維持できます。
一枚撮りのシングルショット、別撮りの星空におすすめ
一枚撮りのシングルショットの場合は、星が白とびしにくいというメリットがありますが、レタッチで景色のシャドウ部分を明るくすると若干ノイズが目立ってしまうと言ったデメリットがあります。
星景写真で空と風景を別撮りする場合、空の露出をETTLにすれば、星が本来持つ色を維持できるのでおすすめです。
中央のニュートラルな露出
山が中央付近にあって、左右の端に接触していないニュートラルな状態のヒストグラムは、星景写真だけでなく一般的な写真の露出としては、理想的な設定となります。星景写真だと若干明るく感じますが、RAW現像時に編集ソフトで露出を下げればOKです。
ニュートラルな露出の写真は、レタッチや編集がしやすく、景色のシャドウ部分を無理に明るくするといった必要がないので、結果的にノイズを抑えることができます。
ヒストグラムの山が2つある星景写真の場合は、バランスよく全体が中央になるようにニュートラルな露出設定すれば大丈夫ですが、明るい星が白とびしやすくなるので、一枚撮りのシングルショットであれば、ニュートラルより若干左寄りの設定が安全です。
別撮りの風景におすすめ
星空と風景を別撮りする場合、全体をニュートラル付近の露出に設定するとシャドウ部分の高感度ノイズを抑えることができます。
右寄りの露出(ETTR)
ETTR(Exposed To The Right)、やや右寄りのヒストグラムは、少し露出オーバー気味ですが、白とびしていなければ安全範囲内です。ETTRはイメージセンサーの特性を生かし、ダイナミックレンジを最大限に引き出し、一番ノイズを抑えられる撮影方法です。光害の影響がある星景撮影に特に有効と言われています。
ETTRで撮影した星景写真は、かなり明るいのでRAW現像時に編集ソフトで露出を下げて適性の明るさに補正します。
ノイズは抑えられるが調整が難しい
ETTRは、白とびしないギリギリの露出に調整する必要があり難易度が高い撮影方法となります。明暗差の激しい場所では、白とびしてしまうので不向きです。
星景撮影で絶対ダメな露出
完全に黒つぶれや白とびしてしまうと編集ソフトでも復元することができないので、絶対に避けましょう。
露出アンダーの黒つぶれ
星景写真で良くある失敗が、ヒストグラムの左部分が端に付いてしまっている状態が露出アンダーの黒つぶれです。ISO感度を上げると高感度ノイズが増えるという理由で、出来るだけISOを低めにした結果、黒つぶれしてしまうパターンです。
黒つぶれした星景写真は、Lightroomなどの編集ソフトでレタッチして景色のシャドウ部分を明るくしても、ノイズが目立ってしまいます。また、完全に黒つぶれした部分はRAWファイルであっても復元することができなくなってしまいます。
露出オーバーの白とび
ヒストグラムの右部分が端に付いてしまっている状態が露出オーバーの白とびで、星景写真で露出オーバーになってしまうと、星が本来持っている色情報がなくなるので、白色だけの星や天の川になってしまいます。
白とびした星景写真は、RAWファイルであってもLightroomなどの編集ソフトでもレタッチして復元するのが困難になるので、絶対に避けたい露出設定です。
星景写真で白とびしてしまう場面は少ないのですが、比較的明るい街灯や街明かりが画角に入ってしまうと、白とびしやすくなります。そういった場合は明暗差が激しいので、できるだけ明るい光源が入らないようにカメラのアングルを変えるのが一番いい対処法です。
また、ソニーのミラーレス一眼カメラであれば、撮影する前に白とびしている場所を表示してくれる『ゼブラ』を使えば、白とびを防ぐことができます。
星景撮影の露出変更方法
ISOで調整するのが基本
星景撮影で露出を変更する場合は、基本的にはISOで調整するのが一番失敗が少なく簡単です。シャッタースピードで調整すると、星が点ではなく線状になる可能性があるので注意が必要です。また、絞りで露出を調整する場合は、レンズによってはピントを合わせ直す必要があるので手間がかかります。
もちろん上級テクニックとして、空と風景を別撮りする場合は、ISOだけでなく、絞りやシャッタースピードを組み合わせて調整する方法もあります。
高感度ノイズを恐れない!
最近のカメラは高感度ノイズが抑えられているので、恐れずにISO感度を上げて、黒つぶれを避ける事が重要です。高感度ノイズは複数枚の画像をスタックさせる事で除去できますが、完全に黒つぶれしてしまうと復元できなくなってしまいます。
まとめ
光害の少ない場所で星景撮影すると、星空と景色には意外と明暗差があるので、まずは、黒つぶれや白とびをさせないようにするのが重要です。理想はETTLからニュートラルの間位の露出設定にすれば、失敗が少なくなるかと思います。
できれば、空と景色は別撮りにして、それぞれの適正露出で撮影したものを現像時に合成する方法が最も綺麗に仕上げることができます。